物価の高騰や賃貸経営の状況などから、家賃の値上げを考えなければならないことがあります。一番の懸念は、入居者に家賃の値上げをどのように通知するかでしょう。 家賃の値上げは経営側の判断だけでは不可能で、入居者の同意があって初めて可能となります。そのため、家賃の値上げ交渉に失敗すると値上げできないどころか、経営側に不利な状況になることも考えられるので注意が必要です。
ここでは、入居者とトラブルなく家賃の値上げにこぎつけるための通知方法や交渉術を紹介します。
目次
家賃値上げが必要な場合は3パターンある
家主の意向ならどんな理由でも家賃の値上げが許されるというわけではいきません。経営側からすると収益は多いに越したことはありませんが、家賃の値上げは必要なときに必要なだけ行っていかなければなりません。その必要なときとして認められるのが、主に以下の3つとなっています。
- 周囲の同じような物件より安くなった
- 税金が上がった
- 再開発などによりエリアの価値が上がった
周囲の同じような物件より安くなったのにあわせた賃料値上げ
条件や間取りなどが似たような物件が近所にある場合、家賃を比べて安かったら同じくらいの額まで上げることが認められています。
税金や物価の上昇に伴う賃料値上げ
税金や物価が上がると、経営側も金銭的な負担を強いられることになります。そのため、それに伴う家賃の値上げは理由として正当であるとされています。
再開発などによりエリアの価値上昇とあわせて賃料値上げ
物件周辺のエリアが再開発などによって活性化されると、周囲の土地の価値が上がります。物件自体も価値が上がったり、土地の価値が上昇することで固定資産税が上がったりするので、家賃の値上げが受け入れられる傾向にあります。
家賃値上げ通知によるトラブル例
正当な理由があったとしても、家賃の値上げに入居者が応じなければ合意には至りません。家賃値上げの通知をした瞬間、次々と入居者が出て行って家賃収入なくなったり、入居者と対立して裁判になったりするトラブルも実際に起こっています。
また、契約更新時期に家賃の値上げ通知をして入居者の合意が得られない場合、法定更新となって家賃の値上げは難しくなります。
法定更新とは、法律で入居者を守るために決められているもので、賃貸契約において期限までに双方で合意できなかった際、家賃などの条件はそのままで期間の定めがない契約として勝手に更新されてしまうというものです。 法定更新は強行規定なので、その後いかなる交渉や契約をしても無効とされてしまい、経営側が不利な立場となってしまいます。
トラブルを避ける家賃値上げ交渉3つのポイント
どんな値上げも支払う方は難色を示すものなので、家賃の値上げ通知をするなら多少のトラブルは覚悟しなければなりません。しかし、大きなトラブルなく入居者に家賃値上げについて合意して欲しいものです。そのための交渉術を3つのポイントから紹介します。
固定資産税の増加をはじめとした根拠のあるデータを提示する
周辺物件と比べて安くなっていたり、固定資産税が上がっていたりなどの理由で家賃の値上げをする際は、その根拠となるデータを収集して入居者に提示しましょう。ただただ文章や口頭で「他の物件より安いから」や「税金が上がったから」などと説明しても、それを示すものが何もなければ入居者は納得できません。
法定更新となる場合があるので更新時の値上げ交渉は避ける
前述したとおり、更新時に家賃の値上げ通知を行うのは法定更新となる場合があるのでリスクがあります。入居者が法定更新のことを知っていたら、家賃の値上げには応じないことが考えられます。 家賃値上げの通知は、契約更新時を避けるのが無難でしょう。
更新料を一度無料にするなど譲歩する姿勢を見せる
いくらいろいろ根拠のあるデータを提示されて頭では納得できても、家賃の負担がのしかかるとなれば入居者が合意しにくくなるのは予想できることです。次回の更新料を無料にするなど、入居者にとってもメリットになる条件を提示してみましょう。
入居者の気持ち的にも合意しやすくなり、トラブルなく家賃の値上げができる可能性が高くなります。
家賃値上げ通知は納得できる材料と譲歩条件を揃えてから
家賃の値上げは正当な理由なくしてできるものではなく、通知しても入居者に合意してもらわなければ値上げできません。
入居者に家賃の値上げに合意してもらうには、値上げの理由を明確にし、その根拠となる資料を提示して納得してもらいましょう。また、法定更新となることを避けるため、家賃の値上げ通知は更新時を避けて交渉するべきです。
その際、家賃を値上げする代わりに更新料の無料化などを計り、入居者の利益になる条件を提示すると合意に至りやすくなります。以上のポイントを押さえて家賃の値上げ交渉をしていくと、大きなトラブルを回避しやすくなるでしょう。