不動産投資を法人化するタイミングは?方法やメリット・デメリットを解説

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「不動産投資で安定して収入が得られるようになった」

「収入が多くなるにつれ税金が気になるようになってきた」

不動産投資である程度収入がある場合は、会社を設立して、法人として不動産を所有する方法も考えられます。

この記事では、不動産投資を法人化するタイミングやメリット・デメリットを解説。

法人化する際の具体的な方法についても紹介しています。

不動産投資をもっと効率的に行いたいとお考えの方はぜひ参考にしてみてください。

 

不動産投資における「法人化」とは?

不動産投資における「法人化」とは?

不動産投資における「法人化」とは、投資家が代表者となって資産管理会社を設立し、不動産の管理を個人から法人へ移行して不動産投資を行うことを指します。

資産管理会社とは、所有する不動産や株などの資産を管理することを目的として設立される会社。

通常の会社とは異なり営業活動は行いません。
自分自身で設立し、自分自身の資産を守るために業務がなされるため、プライベートカンパニーとも呼ばれています。

 

個人・法人の異なる点

法人化をしても物件を購入、管理し利益を得るという不動産投資自体の運用方法は変わりません。
しかし、仕組みとしては以下のような違いがあります。

個人 概要
運用の流れ 個人が物件の購入・管理を行う 個人が資本金を出し、法人が物件の購入・管理を行う
不動産の所有者 個人 法人
投資家が得る所得 個人の所得 法人から支払われる役員報酬、法人からの配当
所得に対して課される税金の種類 所得税、住民税 法人税

 

メリットとデメリットを解説

メリットとデメリットを解説

ここでは、不動産投資を法人化することのメリットとデメリットについて解説します。

 

メリット

不動産投資を法人化することによって得られるメリットは以下の9つです。

法人化によるメリット
  1. 毎年の所得税等の節税が可能
  2. 法人との税率差で毎年の税負担を軽減が可能
  3. 経費の範囲が広がる
  4. 欠損金の繰越期間が10年になる
  5. 相続税の節税になる
  6. 決算月を自由に決められる
  7. 株式の贈与などによる事業承継が可能
  8. 役員の各人が給与所得控除を受けられる
  9. 死亡退職金制度の活用が可能

特に重要な1から6について詳しく解説します。

 

メリット① 毎年の所得税等の節税が可能

不動産投資を法人化する最大のメリットは、法人を通じた所得の分散により、毎年の所得税等の節税が行えることです。

法人を設立してその役員に配偶者や子を就任させ、役員報酬を出すことで家族に所得を移すことができます。

これを「所得分散」といいます。

これにより、個人オーナーが1人で受けていた家賃(所得)を、法人を通じて家族に分散することが可能です。

所得税は所得が大きいほど段階的に税率が高くなるため、法人化により所得を分散すると、個人1人に適用されていた税率よりも適用する税率は低くなり、家族全体で支払う所得税等の負担を軽減することができます。

 

メリット② 法人との税率差で毎年の税負担を軽減が可能

不動産所得が高額になる場合には、個人として納税する所得税の税率よりも法人として納税する法人税の税率のほうが低くなるため、法人化することで納税額を抑えることが可能です。

具体的には、個人の所得にかかる所得税の税率は5%~45%であるのに対し、法人の所得にかかる法人税の税率は23.2%であり、しかも資本金1億円以下で法人化すれば、800万円以下の部分は15%になります。

収益がどのくらいのタイミングでの法人化が最適かは後ほど解説します。

 

メリット③ 経費の範囲が広がる

法人の場合、家族を役員にして報酬を支払うことや退職金の積み立てが可能になり、これらを経費として計上することが可能です。

また、生命保険の経費計上可能額も大きくなります。

 

メリット④ 欠損金の繰越期間が10年になる

個人事業主として青色申告を行っている場合、損失が生じた場合の繰り越し可能期間は最大で3年間ですが、法人の場合は最大10年間の繰り越しが認められています。

 

メリット⑤ 相続税の節税になる

不動産の賃貸収入が個人に蓄積されれば、将来の相続財産が増加する可能性があります。

不動産の賃貸収入を法人に分散すれば、相続税の負担を減らすことにも可能です。

特に不動産所有方式で不動産を法人名義にすれば、賃貸収入の大半をが相続税の対象から外すことができ、将来の相続税の節税に繋がります。

 

メリット⑥ 決算月を自由に決められる

個人の場合、決算は強制的に12月ですが、法人化すれば、決算月を自由に定めることができます。

入退去の多い時期などの繁忙期に税務申告をしなくて済むよう調整するとよいでしょう。

 

デメリット

デメリット

不動産投資を法人化することによるデメリットは以下の5つです。

法人化によるデメリット
  1. 法人の設立・運営コストなどがかかる
  2. 法人化によって社会保険料等の支出が増える
  3. 赤字でも法人住民税が発生する
  4. 法人の相続対策が必要になる
  5. 個人より不利になる税制も一部ある

以下で詳しく解説します。

 

デメリット① 法人の設立・運営コストがかかる

法人の設立・運営にかかる金額は、設立する法人の規模や種類によって変わります。

法人化するには、法人の設立登記をしなければならず、それには登記手数料などのコストが発生します。

不動産所有方式の場合には、個人から法人への不動産の移転について譲渡所得勢・住民税・不動産取得税や登録免許税などの移転コストが発生する場合も。

さらに、上記以外にも、会社法等に基づく役員変更登記の費用や決算公告料、税務申告にかかる税理士報酬などがかかることがあります。

運営のために必要な経費が継続的に発生することに注意が必要です。

 

デメリット② 法人化によって社会保険料等の支出が増える

法人化すると、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が必要になります。

給与を支払った場合、毎月、個人と同額の保険料を、法人でも負担しなければなりません。

法人の負担分と役員個人の負担分を併せて、社会保険料は役員報酬の3割弱となるため、負担はかなり大きくなります。

 

デメリット③ 赤字でも法人住民税が発生する

法人化すると、都道府県や市町村に支払う法人住民税の「均等割」として、最低でも12か月で7万円の納税義務が毎期発生します。

均等割は、資本金や従業者数に応じて計算されます。たとえ赤字であっても申告・納税しなければなりません。

よく「法人が赤字でも最低7万円の納税が必要」と言われているのは、この法人住民税均等割のこととなります。

 

デメリット④ 法人の相続対策が必要になる

法人の株主や出資者が死亡すると、保有する株式や出資持分などが相続税の対象になります。

法人化する際は、この部分まで対策を講じなければ、せっかくの相続税対策の効果が失われてしまいます。

 

デメリット⑤ 個人より不利になる税制も一部ある

法人化によって不利になる税制の一つとして挙げられるのが、役員給与の損金不算入。

法人の役員やみなし役員に支払う給与は、予め決めた定期同額(毎月同額で支払われる給与)で支給しなければ、基本的には経費になりません。

また、不動産売却益に対する課税にも注意が必要です。

個人所有の不動産の売却益が長期譲渡所得にあたる場合、その税率は一律20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。法人所有とした不動産を売却した場合に、この税率は適用できません。

 

法人化するタイミングはいつ?

法人化するタイミングはいつ?

法人化のタイミングは不動産投資による所得が一定の基準を超えたときがおすすめ。

ここでは、おすすめの法人化のタイミング2パターンを紹介します。

 

パターン① 不動産事業が黒字運営で給与所得が900万円を超える場合

このような場合、物件の所得部分の税率は、個人であれば所得税と住民税を合わせて43%、法人であれば15.0%~23.2%です。
個人税率>法人税率なので、法人化した方が税金は少なく済み、最終的な手残りが多くなります。

実際の額で例えると、個人のまま不動産投資を行うよりも年間で50万円以上の差が出ることが多いです。
この場合は月々に直すと4万円以上のお金が手元に残るということですから、法人化すべきといえます。

 

パターン② 専業大家で不動産所得が年330万円超える場合

専業大家は給与所得がないので少し計算方法や規模の前提が異なりますが、かかる税率は、個人であれば30%~、法人であれば15.0%~23.2%です。
個人税率>法人税率なので、法人化した方が税金が少なく済み、最終的な手残りが多くなります。

実際の額で例えると、個人のまま不動産投資を行うよりも年間で100万円以上の差が出ることが多いです。
かなり大きな額だといえるので、専業大家で不動産所得が年330万円を超える場合には、法人化するのがおすすめ。

しかし、法人設立すると、司法書士費用・顧問料などの税理士費用・法人住民税などのコストがかかります。
所得が330万円以下の場合には法人化を急ぐ必要はなく、さらに所得が195万円以下の場合には個人と法人の税額が同率になるため、法人化の検討は不要です。

このように、個人と法人の税率の違いに注目し、個人税率>法人税率になる場合に法人化すべきです。

 

不動産投資で法人化する方法を解説

不動産投資で法人化する方法を解説

法人設立までの流れや具体的な方法について紹介します。ざっと全体像を見渡すだけでも具体的に法人化のイメージを持つことができます。肩の力を抜いて最後までご覧ください。

 

社名や所在地などの決定

不動産投資事業を法人化するためには、以下のような設立事項を決める必要があります。

設立事項 概要
社名 どのような社名でも問題はありませんが、特殊な記号を入れたり「〇〇銀行」など誤解を招いたりする単語は使えないので注意が必要です。
所在地 自宅にすることも可能です。また登記に対応したレンタルオフィス等を利用しても良いでしょう。
資本金 1円からでも設立可能です。ただし現実的には初期の運営コストなどを考え数十万円から数百万円にするのが一般的です。
発起人 15歳以上であれば誰でもなることができます。本人1人でも家族や知人を含めた複数人でも問題ありません。
取締役 株式会社を設立する場合、必ず1人以上の取締役が必要です。取締役は業務執行に関する意思決定を行い、その会社を代表します。

 

印鑑の作成

印鑑は最低でも2本は必要です。1本は会社実印、もう1本は会社銀行印です。

会社実印はその会社を表す最も重要な印鑑です。法務局で登記申請を行う時や、高額な取引を行う際に必要となるため、設立前に必ず用意しておきましょう。個人の実印と同じく、会社実印として使うためには印鑑登録が必要です。

会社銀行印は法人の銀行口座を開設したり手続きを行ったりする際に必要な印鑑です。会社のお金を移動するなど使用頻度が高いため前もって作っておくようにしましょう。

 

書類の作成

印鑑等の準備ができたら登記に必要な書類を作成しましょう。主なものは次の通りです。

必要書類 概要
定款 基本的な会社のルールをまとめたものです。書式は決まっていませんが、必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)、記載しなければ有効にならない事項(相対的記載事項)などがあるため慎重に作成しましょう。
登記申請書 申請のために必要な書類です。法務局のホームページでWordなどの書式が入手できるためパソコンで作成するのが一般的です。
就任承諾書 取締役の就任を承諾したことを証明する書類です。取締役が1人の場合は不要です。
取締役の印鑑証明書 発行後3か月以内のものを用意します。

他にも登録免許税分の収入印紙を貼付した台紙、資本金の振込を証明するための書類、印鑑届出書などが必要です。

 

書類を法務局に提出

必要書類を作成したらまずは公証役場で定款の認証を受け、その後法務局に行きます。

法務局では設立登記の申請と会社印の登録を行います。設立登記の申請では会社の情報を国が管理する登記簿に登録します。これにより会社の情報などが登記簿謄本として取得できるようになります。

設立登記の申請や会社印の登録が終わり受理されると、約1~2週間程度で登記が完了します。

設立後も税務署や都道府県税事務所、市町村役場、年金事務所などに設立の届出が必要になりますので忘れずに行うようにしましょう。

 

記事まとめ

記事まとめ

この記事では、不動産投資を法人化するタイミングやメリット・デメリット、法人化する際の具体的な方法についても紹介しました。

法人化のデメリットとメリットは、どちらもコストや税に関するものになっています。

つまり、法人化が吉と出るか凶と出るかは、個人の不動産投資での収入によるといえるでしょう。

本記事でご紹介したように、法人化のタイミングは、不動産事業が黒字運営で給与所得が900万円を超える場合、または、専業大家で不動産所得が年330万円超える場合が最適です。

投資収入について再確認したうえで、メリット・デメリットをふまえて法人化を検討しましょう。

 

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