不動産投資などで得た不労所得には、いくらの税金がかかるのでしょうか。
税金を把握せずに不労所得を得てしまうと、手元に残るお金が減ってしまう恐れがあります。
今回はこれから不労所得を得る方や、すでに不労所得を得ている方に向けて、不労所得にかかる税金の種類や計算方法、節税の方法について解説します。
税金の概要を把握して、余計なトラブルを回避しましょう。
不労所得とは?
不労所得は働かずに得た所得のことで、主に不動産投資や株式投資といった手段で得た家賃や配当などが不労所得といわれています。
不労所得の種類は以下のとおりです。
不動産所得 | 土地・建物などの不動産の貸付け、地上権などの不動産の上に存する権利の設定および貸付け、船舶や航空機の貸付けによって得られた所得 |
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利子所得 | 預貯金・公社債の利子、合同運用信託・公社債投資信託・公募公社債などの運用投資信託の収益分配金による所得 |
配当所得 | 株式の配当金、余剰金、株式投資信託の収益分配金、保険会社から受け取る基金利息などの所得 |
事業所得 | 事業の運営によって生じた所得 |
一時所得 | 営利目的による継続的な行為で発生した所得以外の所得 |
雑所得 | 不動産・利子・配当・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時所得以外の所得 |
譲渡所得 | 不動産、株式、ゴルフ会員権などの譲渡で生じる所得 |
出典:国税庁
不動産所得は、所有する物件を貸して得られる家賃収入や駐車場運営による収入、所有する土地に作った看板の使用料などが挙げられるでしょう。
ただし、事業・譲渡所得にあてはまる収入は、不動産所得には含まれません。
利子所得では、債券投資で得られる利子や、株式投資信託を除いた投資信託による収益の分配金があてはまります。
一時所得は懸賞・福引の賞金・賞品や、競馬・競輪の払戻金、生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金などです。
雑所得には公的年金や原稿料、FX、ECサイト・ネットオークションの売上などが挙げられます。
不労所得にも税金は必ずかかる
働かずに稼いだ所得であっても、税金はかかります。
不動産投資やFXなどで所得が発生していれば、所得の種類に応じて税金を支払う決まりです。
不労所得だからといって放置していると、無申告加算税や不加算課税、延滞税が課せられます。
不労所得があるなら、どのような税金がかかるのか、いくら税金を支払うのかを把握しておく必要があるといえるでしょう。
不労所得にかかる税金は主に2種類
不労所得がある場合、所得の種類に応じて税金が課せられます。
不労所得で支払う税金は主に所得税と住民税の2つなので、ここではそれぞれの特徴について解説していきます。
所得税
所得税は、税金の額に偏りが生じないよう、所得の金額に応じて課せられる税金です。
所得の金額によって、課税額・税率・計算方法に違いが見られます。
不労所得を得たときは所得額・税額を計算し、確定申告を済ませてきちんと税金を納めましょう。
住民税
住民税は自治体に納める税金です。
自治体が計算した金額を納税者に通知する賦課課税方式のため、自分で税金の額を計算する必要はありません。
住民税を納める方法には、普通徴収と特別徴収があります。
普通徴収は届いた納付書を使い、自分で税金を納める方法です。
一方、特別徴収は会社側が税金を納める方法で、従業員から住民税を徴収し、従業員に代わって税金を納めます。
しかし、特別徴収の利用には注意が必要です。
会社が住民税を納めるため、副業の事実が発覚してしまいます。
副業を隠しているなら、自分で納付する普通徴収を選びましょう。
徴収の方法は確定申告の過程で選べるので、副業を隠しておきたい場合は特別徴収ではなく普通徴収に変更しておくことをおすすめします。
また、自治体によって徴収方法が選択できない場合があるので、事前に確認するようにしましょう。
不労所得で税金がかかるのはどんな場合?
FXや株式投資、投資信託などで不労所得があれば、所得額によって確定申告が必要となることがあります。
また、住民税の申告は所得額に関係なく手続きが必要になるので、事前に手続きに関する情報を集めておきましょう。
不労所得が20万円を超えたら確定申告が必要
会社員でFXや不動産投資などの副業による不労所得があるなら、以下のケースにあてはまるかどうかを確認しましょう。
1社から給与をもらい、給与所得と退職所得と除いた所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要になります。
確定申告の流れは、以下のとおりです。
2.税務署に確定申告書を提出する
不労所得が20万円以下でも住民税は申告が必要
住民税は所得税とは違い、少しでも不労所得があれば申告を必要とします。
不労所得が20万円以下で確定申告をしない場合は、市区町村に住民税を納めてください。
副業で不労所得を得ている会社員は、会社が副業を認めているかどうかで申告の方法が異なります。
会社が副業を認めている場合
以下の流れで住民税の申告を済ませましょう。
2.自治体の窓口で書類を提出する(郵送でも可)
会社が副業を認めていない場合
すべての会社が副業を認めているわけではありません。
所得に対して住民税の額が大きいと会社に副業を行っていることを知られてしまうので、以下の手順で住民税の申告を済ませてください。
2.確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」で「給与所得以外の住民税の徴収方法の選択」から「自分で納付」を選ぶ
不労所得にかかる税額の計算方法
FX・不動産投資・株式投資などの不労所得がある場合、一定額の税金がかかります。
たとえば不動産所得で収入を得た場合、課せられる税金は以下のような方法で計算できます。
2.不動産所得の金額から所得税・住民税を計算する
不動産所得の場合の計算方法
家賃収入などで得た不動産所得の金額は、以下の方法で計算します。
なお、総収入金額と必要経費に含まれるものは以下のとおりです。
総収入額に含まれるもの | 必要経費に含まれるもの |
---|---|
・家賃収入 ・共益費 ・礼金 ・更新料 など |
税金(不動産取得税・固定資産税など) ・借入金の利子 ・減価償却費 ・修繕・管理費 ・保険料(損害・火災・地震保険) など |
次に、得られた不動産所得の金額から、所得税と住民税を計算します。
不動産所得は総合課税のため、ほかの所得と合わせて所得税額を計算するので注意しましょう。
会社員で不動産所得のほかに給与所得がある場合は、不動産所得と給与所得を合わせてください。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万以上 | 45% | 479万6,000円 |
出典:国税庁「所得税の税率」
住民税の計算は自治体によって違いが見られるので、計算する場合は自治体のサイトを確認してください。
以下は東京都のケースを採用して計算したものになります。
- 所得税額=所得割額+均等割額
- 所得割額=総所得金額(前年度)-所得控除×10%-税額控除
- 均等割額=都民税額1,500円+市区市町村民税額3,500円
所得の種類によって税率やかかり方が異なる
不動産所得では、上記のように所得税額を計算しましたが、ほかの不労所得ではどのように計算するのでしょうか。
不動産所得以外の不労所得では、以下のように税金の額を計算します。
不労所得の種類 | 税金の計算方法 |
---|---|
利子所得 | 利子などの収入金額(源泉徴収される前の金額)×20.315% |
配当所得 | 1.配当所得の金額=収入金額(源泉徴収税額を引く前の金額)-株式などの取得による借入金の利子 2.上場株式などの配当所得金額×20.315% (申告不要制度を使えば確定申告は不要だが、総合課税・申告分離税を選ぶと確定申告が必要) 上場株式などを除いた配当所得金額×20.42% (総合課税のため確定申告が必要) |
事業所得 | 1.事業所得の金額=総収入額-必要経費 2.損益通算後、ほかの所得と合わせた総収入額で所得税額を計算する |
一時所得 | 1.一時所得の金額=総収入金額-収入を得るための支出金額-特別控除額 2.一時所得の金額×1/2とほかの所得を合わせて所得税額を計算する |
雑所得 | 1.公的年金等の雑所得=収入金額-公的年金等控除額 2.業務にかかる雑所得=総収入金額-必要経費 3.上記以外の雑所得=総収入金額-必要経費 4.1~3とほかの所得を合わせて所得税額を計算する |
譲渡所得 | 1.課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 2.長期譲渡の場合は、課税譲渡所得金額×20.315% 短期譲渡の場合は、課税譲渡所得金額×39.63% |
出典:国税庁
税金を減らすための方法
不労所得にいくらの税金がかかるのかを確認したあとは、節税の方法にも目を向けましょう。
以下に挙げる方法を活用して、支払う税金の額を抑えてください。
必要経費を細かく計上する
まずは計上できる経費を見落としていないかを確かめましょう。
計上できる経費があれば、所得税額を下げられます。
たとえば不動産投資の場合、以下のような経費が計上可能です。
- 管理・修繕費
- 修繕積立金
- 管理会社に支払う委託料
- ローンの利息
- 税金
- 減価償却費
- 保険料 など
青色申告をする
不労所得にかかる税金を抑えるなら、確定申告で青色申告を選びましょう。
青色申告は事前の申請・複式簿記での記帳が求められますが、青色申告特別控除や赤字の繰り越しが認められています。
とくに、青色申告特別控除は最大で65万円もの控除を受けられるので、不労所得にかかる税金を抑えるなら青色申告を有効に使いましょう。
特別控除を利用する
不労所得では、一時所得と譲渡所得に特別控除が設けられています。
一時所得には最大50万円の特別控除があるため、こちらを利用すれば課税所得の金額をさらに抑えることができます。
また、譲渡所得では6つの特例が設けられており、それらのなかには以下のような特別控除が用意されているので、該当するかどうか事前にチェックしておきましょう。
譲渡の種類 | 特別控除額 |
---|---|
公共事業などのために土地建物を売った場合 | 5,000万円 |
特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合 | 2,000万円 |
特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合 | 1,500万円 |
平成21年および平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合 | 1,000万円 |
出典:国税庁
ただし、特例を受けるには譲渡の種類ごとに細かな要件が定められているので、利用する際はそれらの要件をチェックしましょう。
法人化する
不労所得に対する税金の額を抑えたい方は、法人化を検討してください。
個人の所得税率は課税所得金額に比例するため、最大で45%に達します。
一方、法人実効税率は、21.366~33.583%(東京都の中小法人、令和2年10月1日以後開始事業年度から3年間)です。
個人の所得税率は課税所得金額1,800万円以上で40%に引き上がるため、課税所得金額1,800万円を目安に、法人化を検討しましょう。
まとめ
FXや不動産投資、株式投資、投資信託などで不労所得がある場合、主に所得税と住民税がかかります。
また、所得の種類によって税金の計算方法は異なるため、これから不労所得を得る方やすでに不労所得がある方は納めるべき税金の金額を計算しておきましょう。
そのほかにも、不労所得を得るなら税金の計算に加えて節税の方法も把握しておくとよいでしょう。
経費の計上・青色申告の選択・特別控除の利用・法人化といった方法を活用すれば、支払う税金をより抑えることができるので、自分に合った方法を検討してみてください。