不動産を所有している方は、名義人死亡・生前贈与・売却・離婚による財産分与などの際、名義変更手続きを行わなければなりません。
ただし、不動産の名義変更は、ケースによって必要書類や手続きの流れが異なるため注意が必要です。
今回のコラムでは、不動産の名義変更手続きの流れを、主要4パターンに分けて解説します。
不動産の名義変更が必要になるのはこんな時!
不動産の所有者(名義人)は、法務局の登記簿で管理されています。
よって、所有者が変わった場合は、必ず変更手続きを行わなければなりません。
不動産の名義変更が必要となるケースは、以下4パターンです。
- 名義人が死亡したとき(相続)
- 誰かに土地を譲るとき(贈与)
- 不動産を売却するとき(売買)
- 離婚するとき(財産分与)
一つずつ詳しく解説します。
名義人が死亡したとき(相続)
名義人が死亡した場合は、相続人となる人物へ名義が移ります。
このとき、元の名義人が遺言書を残していれば、そこに記載された人物が名義人(相続人)となります。
しかし、何もない場合は相続人全員で話し合い、誰を名義人にするのかを決めなければなりません。
この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割会議により名義人が決定したら、相続放棄をした人を除く全員で遺産分割協議書にサインをし、必要書類と共に法務局で相続登記申請書を提出しましょう。
誰かに土地を譲るとき(贈与)
不動産を生前贈与する場合、会社や法人から譲る場合は贈与税がかかりません。
ただし、個人間の贈与は贈与税の対象となりますので、ご注意ください。
なお、生前贈与は口約束でも成立してしまうので、厳密にいえば名義変更を正式に行う必要はありません。
ですが、口約束だけでは後々トラブルになってはいけないので、「不動産贈与契約書」を作成し、誰が誰に不動産を譲ったのかを明確にしておくケースが一般的です。
不動産を売却するとき(売買)
不動産を売却すると所有権も買主へ移りますが、登記簿謄本の名義変更は、法律上絶対ではありません。
ただし、買主がローンを組む際、銀行が登記簿謄本へ抵当権をつけるために所有権の移転登記を必要とします。
よって、不動産売却時には所有権移転登記を行い、書面上でもきちっと名義変更を行う必要があるのです。
離婚するとき(財産分与)
離婚をした場合、夫婦の共有財産である不動産は財産分与の対象となります。
そのため、不動産を両名義で購入した場合は、それぞれ夫・妻の名前への名義変更が必要です。その際は、「持分移転登記」手続きを行います。
なお、夫→妻、または妻→夫のように、離婚を機に不動産の名義を変更したい場合は、「所有権移転登記」手続きが必要です。
不動産の名義変更をする流れと必要書類【ケース別】
不動産の名義変更をする流れと必要書類を、相続・贈与・売買・財産分与といったケースごとにご紹介していきます。
最後に、所有している不動産が賃貸物件だった場合の手続き方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
相続の場合
名義人が亡くなり土地や建物を相続することになった場合は、以下の流れで名義変更を行ってください。
- 遺言書または遺産分割協議を元に、相続人を決定する
- 管轄の法務局へ行き、相続人が所有権の移転登記手続きを行う
ただし、相続人が直接法務局へ手続きに行けない場合は、代理人に手続きを依頼する必要があります。
代理人に手続きを依頼する場合は、代理人と相続人の名前・住所、相続する不動産の詳細などが書かれた委任状を作成してください。
【手続きに必要な書類一覧】
被相続人 |
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相続人 |
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その他 |
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贈与の場合
生前贈与として不動産を譲り受ける場合は、以下の流れで名義変更を行ってください。
- 登記事項証明書を取得し、対象不動産に抵当権などの担保が付いていないことを確認する
- 不動産贈与契約書を作成する
- 対象不動産を管轄する法務局へ必要書類を持って行き、不動産登記の名義変更を行う
ただし、本人が手続きを行うことができない場合は、代理人に手続きを依頼することも可能です。
その際は、登記の目的や権利者、義務者、代理人名、対象不動産の詳細などが記載された委任状を作成し、法務局へ必要書類と共に提出してください。
【手続きに必要な書類一覧】
贈与する側 |
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贈与される側 |
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売買の場合
不動産を売却する場合は、以下の流れで名義変更を行ってください。
- 売買契約成立当日、買主・売主の両者が揃って法務局へ行き、登記申請書を作成する
- 売主は物件の引き渡し、買主は残金の支払いを行う
- 対象不動産を管轄する法務局へ登記申請書を含めた必要書類を持参し、名義変更を行う
不動産売買は、通常、買主・売主の両者が同席して行われます。
しかし、どうしてもお互いの都合が付かない場合は、代理人を立てて手続きを行うことも可能です。
代理人を立てる場合は、委任者・受任者の住所氏名、委任する取引内容の詳細、代理人に与える権限などを記載した委任状を作成します。
その後、法務局へ必要書類と共に提出してください。
【手続きに必要な書類一覧】
売主 |
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買主 |
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財産分与の場合
離婚により財産分与を行う場合は、以下の流れで名義変更を行ってください。
- 離婚届を提出する
- 登記簿謄本を確認し、対象物件の所有者の氏名や住所などを確認する
- 対象不動産を管轄する法務局へ登記申請書を含めた必要書類を持参し、名義変更を行う
通常、登記申請書は夫と妻が協力して作成しなければなりません。
しかし、離婚の場合、2人で協力するのは難しいでしょう。
離婚が原因で財産分与を行う場合は、どちらかが委任状を作成し、夫・妻のいずれかが一人で書類を提出するのが一般的です。
ただし、それも難しい場合は、司法書士や弁護士にすべての手続きを依頼することもできます。
【手続きに必要な書類一覧】
名義を譲る側 |
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名義を譲られる側 |
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共同 ※1通ずつ |
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賃貸物件場合はどうやって手続きする?
賃貸物件を借りている場合でも、結婚や離婚などで名字が変わった場合は名義変更が必要です。
名義変更を行う場合は、以下の手順で手続きを行ってください。
- 管理会社や大家さんに名義変更の申請書類を送付してもらう
- 書式に沿って記入し、返送する
【手続きに必要な書類一覧】
入居者 |
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ただし、契約者死亡、または法人契約から個人契約に切り替えたいなどの理由で契約者自体を変更したい場合は、名義変更でなく再契約が必要です。
不動産の名義変更をする際の注意点
不動産の名義変更を行う場合に気をつけたいポイントを4つご紹介します。
名義変更には費用がかかる
不動産の名義変更をする場合は、先の項目でご紹介したケースごとに以下の費用がかかります。
【相続の場合】
- 登録免許税
- 登記事項証明書取得費用
- 司法書士費用(利用した場合)
【贈与の場合】
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 贈与税
- 司法書士費用(利用した場合)
【売買の場合】
- 登録免許税
- 司法書士費用(利用した場合)
【財産分与の場合】
- 登録免許税
- 登記事項証明書
- 郵便代
- 司法書士費用(利用した場合)
このように、不動産の名義変更にはさまざまな費用がかかるため、少しでも節約したくなるかと思います。
費用を抑えるために司法書士を利用しないという方法をとることも不可能ではありません。
しかし、名義変更手続きは非常に複雑な手順を踏むため、知識がない場合は難航してしまいがちです。
そのため、プロに任せたほうが安心といえるでしょう。
なお、不動産の名義変更を行う際は、税金や証明書の発行料に加え、司法書士費用が数万円上乗せされることを覚えておきましょう。
名義変更が完了するまでは時間がかかる
不動産の名義変更を行う際は、法務局へ行く前にさまざまな書類を用意しなくてはなりません。
そのため、今回ご紹介してきたパターンも、以下のように手続き完了まで多少時間がかかります。
- 相続の場合:1ヶ月半~2ヶ月(遺産分割協議がまとまらなければ、数年の可能性あり)
- 贈与の場合:1~2週間
- 売買の場合:1~2週間
- 財産分与の場合:約1ヶ月
とくに期限はありませんが、不動産の名義変更は非常に大切なものなので、早めに手続きを開始するようにしましょう。
代理人が申請する場合は手続きや必要書類が増える
名義変更手続きを本人ができない場合は、司法書士や弁護士などを代理人とし、一切の手続きを代行してもらうことも可能です。
代理人に任せる場合は、必要書類に加え、作成した委任状も持って行きましょう。
名義変更が許可されない場合もある
不動産の名義変更を行う際、遺言書に記載されている住所と実際の住所が異なっていたり、相続人全員と連絡が取れなかったりすると、手続きが許可されません。
勝手に書き換えたり、連絡が取れないまま手続きを進めたりすることは違法となりますので、十分注意をしましょう。
自分で手続きをすると多大な労力になる場合がある
不動産の名義変更手続きは、すべてご自身の手で行うことも可能です。
ただしその際は、平日に役所へ行ってさまざまな書類を発行したり、難しい税金の計算などを一人で行ったりしなくてはならないので、多大な労力がかかります。
しかし、司法書士や弁護士に依頼をすれば、面倒な書類集めや税金の計算など、ほぼすべての作業を代行してもらえます。
依頼料は5万円が相場ですが、ご自身で行うよりずっとスムーズに手続きが完了しますので、不動産の名義変更はプロに任せてみることをおすすめします。
まとめ
不動産の名義変更は法律上義務化されていませんが、きちんと手続きをしておくことで、後々起こりうるトラブルを未然に防ぐことができます。
名義変更は、今回のコラムを参考にしていただければご自身で行うことも可能です。
しかし、司法書士や弁護士などに依頼をした方が、ミスもなくスムーズに完了するので、手続きが必要な場合はプロに依頼をしてみましょう。