相続税対策の一手段として、「不動産投資」を考えている方もいらっしゃるかと思います。不動産投資は、数ある資産のなかでも、実際に相続税の節税に有効な対策法です。
しかし、不動産投資による相続税対策では、どの程度の節税となるのかなど、詳細はよく分からないという方も多いかもしれません。
今回は、不動産投資が相続税対策として有効な理由とその仕組み、相続税の計算方法についても、具体的に詳しく解説します。
目次
相続税の計算で大切な「基礎控除額」
相続した財産の評価額(相続税評価額)から基礎控除額が引かれ、プラスとなった場合に相続税が課税されることになります。
・相続税評価額 - 基礎控除額 = 相続税課税対象額
・相続税課税対象額 × 相続税率 = 相続税額
※相続税率は遺産取得額により変わります。
例えば、相続税評価額が1億円で基礎控除額も1億円の場合には、上記の計算式により相殺され、相続税の課税対象額が0ということになり、相続税を支払う必要はなくなります。
2015年の法改正で基礎控除額が減額された
ところが、そんな相続税の計算で大切な基礎控除額について、2014年までと2015年以降では、以下のように変化しています。
相続税の基礎控除額の変化 | |
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~2014年12月31日 | 2015年1月1日~現在 |
5,000万円+(法定相続人数×1,000万円) | 3,000万円+(法定相続人数×600万円) |
2015年以降では基礎控除額が減額されているため、それまでは相続税が発生しなかったケースでも、相続税の課税対象となる場合が増える結果となっています。
相続税評価額が1億円で法定相続人が5名の場合を例に挙げて、相続税がどのくらい変化したのか見てみましょう。
相続税評価額1億円、法定相続人数5名の場合 | ||
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適用期間 | ~2014年12月31日 | 2015年1月1日~現在 |
相続税基礎控除額 | 5,000万円+(5人×1,000万円)=1億円 | 3,000万円+(5人×600万円)=6,000万円 |
相続税課税対象額 | 1億円―1億円=0円 | 1億円―6,000万円=4,000万円 |
評価額を下げるのが相続税対策の要!
相続税対策としては、計算式の最初に位置する「相続遺産の評価額」を下げることがポイントとなります。遺産の評価額が下がることで、相続税額を抑えることができるのです!
不動産投資が相続税対策になる理由は?
現金や預貯金など他の資産とは違い、不動産投資が相続税対策となるという理由は大きく2つ挙げられます。
相続税評価額を下げられるのが最大のメリット
相続した遺産がすべて現金の場合には、相続税評価額もその現金と同額と見なされてしまいます。
一方、遺産が土地・建物といった不動産の場合、さまざまな点で相続税評価額を下げることが可能なのです。
建物の相続税評価額が減る仕組み
マンションなど建物を相続した場合は、「建物に対する固定資産税評価額」が、その建物の相続税評価となります。
建物の固定資産税額は、一般的に建築費の5~6割となっています。そのため、現金を相続するよりも、その分、相続税評価額を減らすことができます。
建物を賃貸物件として貸し出した場合、「借家権」という制度によって借主がある程度保護されますので、さらにその分の相続評価額が下がることになります。借家割合は、全国一律で3割です。
財産が1億円の場合 | ||
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相続税対策方法 | マンションを購入 | 購入したマンションを賃貸に出す |
相続税評価額 | 1億円×0.6=6,000万円 | 1億円×0.6×0.7=4,200万円 |
土地の相続税評価額が減る仕組み
不動産でも土地を相続した場合には、路線価による「路線価方式」、人口の少ないエリアや田畑などを対象とした「倍率方式」という2つの計算式で、相続税評価額が導き出されます。
路線価とは各路線に面する宅地の評価額のことで、不動産の公的価格の1つです。この路線価は、購入価格よりも低く設定されていますので、財産が現金の場合よりも、相続税評価額が下がることになります。
・路線価方式による土地の相続税評価額 = 土地の路線価 × 土地の面積 × 補正率
・倍率方式による土地の相続税評価額 = 土地の固定資産税評価額 × エリア別倍率
※路線価や補正率はケースによりまちまちですが、土地の相続税評価額は路線価のおおよそ8割ほどとなることが多いです。
また、土地を賃貸用とした場合は、「借地権」が発生することから、相続税評価額より一定の額が割り引かれることになります。
土地の相続税評価額 -(土地の相続評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)= 割引後の土地の相続評価額
※借地権割合や借家権割合は、エリアごとに異なります。賃貸割合について、全部の部屋を貸し出している場合には10割となります。
財産の土地の評価額が8,000万円の場合 | ||
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相続税対策方法 | 土地を購入 | 購入した土地に賃貸用物件を建て、貸し出す |
相続税評価額 | 8,000万円×0.8=6,400万円 | 8,000万円―(8,000万円×0.4×0.7×1)=5,760万円 |
「小規模宅地等の特例」でさらに節税する
こちらは、相続した土地の種類によっては、面積の一定限度分の評価額について減額されるという制度となっています。
例えば、被相続人が貸付事業を行っていたマンション(土地付き)を相続した場合には、その土地のうち200平方メートルまでの評価額は、5割減額されることになります。
不動産投資での相続税対策をシミュレーションしてみよう!
ご紹介した内容がすべて適用された場合にどのくらい節税となるのか、以下の通りの条件を例に挙げて、実際にシミュレーションしてみましょう。
<条件>
①被相続人の財産=1億円(現金)
②時価1億円のマンション(5,000万円)・土地(5,000万円)を相続
・土地の面積=1,000平方メートル
・法定相続人数=1人
・マンションの固定資産税評価額=建設費の60%
・借家権割合=70%
・借地権割合=40%
・賃貸割合=100%
・土地は路線価方式で8割とする
不動産投資を行わない場合 (現金のまま) | 不動産投資を行った場合 | ||
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建物の相続税評価額 | 割引前 |
0円 |
5,000万×0.6 =3,000万円 |
賃貸用建物 | 0円 | 5,000万×0.6×0.7 =2,100万円 | |
土地の相続税評価額 | 割引前 | 0円 | 5,000万×0.8 =4,000万円 |
賃貸物件用土地 | 0円 | 5,000万―(5,000万×0.7×0.4×1) =3,600万円 | |
小規模宅地等の 特例が適用する場合 | 0円 | {5,000万×(1-0.4×0.7)}―(3,600万×0.2×0.5) =3,240万円 | |
相続税評価額 (すべて適用された場合 | 1億円 | 建物2,100万+土地3,240万 =5,340万円 | |
基礎控除額 | 3,600万円 | 3,600万円 | |
基礎控除後の課税評価額 | 6,400万円 | 1,740万円 | |
相続税額 | 6,400万×0.3―700万 =1,220万円 | 1,740万×0.15―50万 =211万円 |
国税庁の速算控除額表に課税評価額を当てはめ、相続税額を出します。不動産投資を行った場合では、約1,000万円も節税が可能となるのです。
(参考:「相続税の税率」国税庁)
不動産投資をかんたんに始めるのは危険!リスクも理解しておこう
「相続税対策になるのであれば、すぐにでも不動産投資を始めたい!」と感じるところですが、不動産投資には、さまざまなリスクがついて回ることを忘れないようにしましょう。
空室が出た場合には家賃収入が減りますし、投資用ローンを組んで物件を購入した場合ではローン金利の上昇リスクもありますので、節税対策をメインに考えすぎないようにし、リスク対策もしっかりするようにしましょう。
詳しくは、不動産投資のリスクについて解説している関連記事をご覧ください。
不動産投資は会社選びが重要
相続税対策に有効な不動産投資を行う際には、信頼のできる不動産投資会社を選ぶことがとても大切です。
物件の購入がゴールではありません。購入後はマンション経営で資産運用をしていくことになりますので、経験豊富で信頼度の高い不動産会社を選ぶようにしましょう。
ただし、なかには悪徳な不動産会社も存在します。初心者の場合は、不動産投資会社を比較するサイトを活用するのがベストです。
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まとめ
残された家族に税金の面で負担とならないように、相続税対策として不動産投資を考えている人は、その節税効果がどのくらいになるのか具体的に把握しておくことをおすすめします。
不動産投資をするメリットは、相続税の節税効果があるだけでなく、資産価値があることもあります。
また、節税目的で始める場合でも、不動産投資の持つリスクも忘れずに慎重に行うようにしたいものです。そのためにも、信頼できる不動産会社を選ぶようにしましょう。