遺産相続は往々にしてもめ事の種になりやすいのですが、特に扱いが難しいとされているのが不動産の相続です。 中でも賃貸アパートや賃貸マンションは家賃収入が発生するため、物件そのものだけでなく、誰が家賃収入を受け取るかでもめるケースが少なくありません。
不動産経営がうまく行っている場合、家賃収入も立派な資産のひとつとなりますが、一体誰が受け取るべきなのか?気になる情報をまとめてみました。
目次
こんな場合は誰が受け取る?相続物件の家賃収入の扱いをケース別に紹介
相続物件の家賃収入は、物件の相続が決まる前と後で扱い方が異なります。
【相続が決まる前】家賃収入は法定相続人同士で分割する
相続人が一人しかいない場合は問題ありませんが、配偶者や子など相続人が複数に亘る場合、誰がどの遺産を相続するか決めるまでにある程度の時間がかかります。その間の遺産は法定相続人全員の共有財産とみなされるため、賃貸物件から生じた家賃収入は法定相続人同士で分割することになります。
このときの分配方法は法定相続分に則った形となりますので、たとえば100万円の家賃収入を妻と子2人で分割する場合、妻には1/2にあたる50万円、子は残り50万円を均等に分けてそれぞれ25万円ずつ受け取ることになります。 なお、分配は原則代表者が行いますが、不安なら管理会社に任せた方が安心です。
【遺産分割後】家賃収入は物件の相続人がすべて受け取る
遺産分割が終わったら、物件を相続した人はその時点から家賃収入のすべてを受け取ることになります。
なお、遺言などですでに物件の相続人が決まっていた場合は最初から家賃収入を丸ごと受け取れます。たとえ他の遺産の分配が決まっていなくても、物件の相続人さえ決まって入れば法定相続人同士で家賃収入を分配することはありません。
家賃収入のある物件の相続にはリスクも伴う!注意したい3つの点
賃貸物件から得られる家賃収入は最たる不労所得のひとつで、多くの人のあこがれでもあります。 そのため、家賃収入がある賃貸物件を相続することになった場合、多くの人は思わぬ幸運に喜びますが、物件を相続することによって生じるリスクについても考慮しなければなりません。
具体的にどのような点に注意するべきか、3つの点にまとめてみました。
1. 家賃振込手段を確認のうえ貸借人へオーナーが交代した旨を連絡する
個人的にオーナーと知り合いだった場合は別ですが、大半の賃借人はオーナーが亡くなった事を知る術を持ちません。
銀行口座は名義人が亡くなった場合、相続手続きを進める中で凍結させることになるので、もし家賃をオーナーの口座に直接振り込む形にしていた場合、家賃振込ができなくなってしまう可能性があります。
このようなトラブルを防ぐために、賃借人にオーナーが交代することを連絡するとともに、新たな預金口座を用意して家賃振込に対応できる環境を整えておきましょう。
2. 負の遺産にならないように物件の管理修繕体制・資金を整える
賃貸物件から安定した家賃収入を得るためには、物件の管理や修繕をしっかり行っていく必要があります。 できるだけ空室を作らないよう工夫するのはもちろんのこと、建物が古くなったら修繕やリフォームが必要となりますし、家賃滞納などのトラブルが発生したらすみやかに対処するなど、その都度適切な対応が求められます。
また、賃貸物件は収入源となる一方、維持費や修繕費が必要となるため、一定の資金を確保しておかなければなりません。 資産価値の高い収益物件を相続した場合、他の遺産(現金や有価証券など)の取り分は相対的に少なくなるので、賃貸物件を経営していくために必要な資金は自分で用意することになります。
もともと賃貸経営に興味があり、資金も用意できるという場合は良いですが、安易な気持ちで家賃収入のある物件を相続するのはリスクが高いということを念頭に置いておきましょう。
3. 物件の残債がある場合は物件相続人のみを債務者としておく
通常の住宅であれば死亡時に残債分がなくなる団体信用生命保険に加入するのが一般的ですが、収益物件の場合、未加入であるケースも少なくありません。
債務は遺産分割の対象にはならないため、法定相続分通りに分配する形となりますが、その場合、物件相続人以外の人は他人の所有物件の債務を負わされることになります。
こうした不公平はトラブルの種になりかねませんので、物件を相続する際はローン会社に対して債務者を物件相続人ひとりに変更するよう依頼しておきましょう。
家賃収入のある物件を相続するなら管理会社に相談を!
家賃収入のある物件は非常に魅力が大きい反面、相続前に家賃収入を分配したり、物件の管理をしたりといろいろな苦労を強いられることになります。 これまで賃貸物件を所有したことがない方は勝手がわからず、戸惑うことも多いと思いますが、わからないことがあったら相続物件の管理会社に相談してみると良いでしょう。
もし物件に管理会社が入ってなかった場合は、相続を機に専門の管理会社に管理をお願いするのもひとつの方法です。