【不動産投資の疑問】表面・実質利回りの違いや計算方法を解説
【不動産投資の疑問】表面・実質利回りの違いや計算方法を解説

不動産投資で気になる利回りの種類・計算方法を紹介

不動産投資の物件探しをするうえで、各物件にどのくらいの利回りが期待できるのかについては気になるポイントです。

しかし、一口に「利回り」と言ってもその種類は一つではなく、「表面利回り」や「実質利回り」と呼ばれるものがあります。

利回りの種類で計算方法も変わってくるため、種類ごとの特徴や計算式などは不動産投資を始める前に理解しておくことをおすすめします。

この記事では、利回りの種類や計算方法、シミュレーションなど、不動産投資の利回りについてわかりやすく解説します。不動産投資初心者の方や興味がある方はぜひ参考になさってください。

不動産投資の利回りとは

不動産投資の利回りとは

不動産投資の利回りにはいくつか種類があり、代表的なものは「表面利回り」と「実質利回り」です。

まずは不動産投資における利回りとはどういうものか、表面利回りと実質利回り、その他の利回りについてそれぞれの特徴をご紹介します。

表面利回り

不動産投資における表面利回りとは、投資用物件の価格に対して1年間でどのくらいの家賃収入が得られるか、その割合をパーセント記号(%)で表したものです。

「グロス(gross)利回り」と表記されることもあり、物件情報サイトなどに記載される利回りの多くは表面利回り(グロス利回り)で計算されたものとなっています。

表面利回りは、年間の家賃収入を物件金額で割って算出します。

このとき、物件を購入する際にかかる物件価格以外の諸経費や、物件を維持するうえで必要となる諸経費については一切考慮されません。

通常、物件購入時には各種税金や不動産登記費用などの初期コスト、物件経営においても各種税金や修繕積立金、管理委託料などのランニングコストが発生します。

表面利回りにはこれらの必要経費が含まれておらず、家賃収入と物件価格のみで計算されていることに注意が必要です。

【参考】地域別の利回り相場(表面利回り)

不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家(けんびや)」では、収益物件の市場動向をまとめたマンスリーレポートを公表しています。

投資用物件を選ぶうえでは、このような地域別のデータも参考になるでしょう。

ただし、こちらで公表されているのは「表面利回り」であることにご注意ください。

●2022年12月期の利回り相場

区分マンション 一棟アパート 一棟マンション
首都圏 6.56% 7.50% 6.90%
北海道 12.96% 11.39% 8.75%
東北 14.04% 12.35% 11.04%
信州・北陸 18.58% 13.16% 11.58%
東海 9.39% 8.79% 9.39%
関西 7.35% 8.62% 8.55%
中国・四国 14.74% 12.16% 10.97%
九州・沖縄 9.89% 8.57% 8.78%

参照元:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)『収益物件 市場動向 マンスリーレポート 2022年12月期』(https://www.kenbiya.com/img/press/pre2023-01-05.pdf)

実質利回り

不動産投資における実質利回りとは、物件を購入・維持するうえで発生するさまざまな諸経費を考慮して算出する利回りのことです。

利回り=投資額に対する年間収益の割合を計算する際に、現実的にかかる諸経費を加味しているのが実質利回り、加味していないのが表面利回りです。

また、実質利回りは「ネット(net)利回り」と表記されることもあります。

実質利回りは、年間家賃収入から1年間にかかった支出を引いた金額をベースに計算します。

物件経営においてどのくらいの金額の支出が発生するかは人それぞれのため、一般的に不動産業者の広告やコーポレートサイトなどには諸経費を考慮しない表面利回りで掲載されており、実質利回りを知るには現実に即した諸経費を用いて自分で計算しなければなりません。

表面利回りと比べると計算方法が複雑になるものの、不動産投資においては必ず経費が発生することを考えると、それらを加味して計算する実質利回りの方がより現実的な数字となります。

【参考】不動産投資で発生する諸経費の一例

●物件取得時

不動産取得税、固定資産税、不動産登記費用、収入印紙代、仲介手数料、司法書士代行費用、火災保険料(+地震保険料)など

●物件経営時

固定資産税、都市計画税、管理委託料、修繕積立金、修繕費用、集金代行手数料、借入金利子、ハウスクリーニング費用、水道光熱費、広告宣伝費など

その他の利回り

表面利回りと混同されやすい利回りに「想定利回り」があります。

想定利回りとは、投資用物件が満室であることを想定して算出する利回りのことです。

表面利回りは現状の入居状況において計算されるのに対し、想定利回りは空室ゼロ=満室状態にあると仮定して計算されます。

不動産広告などには表面利回りもしくは想定利回りが掲載されるのが一般的ですが、表面利回りと記載があっても満室想定で計算されている可能性があることに注意が必要です。

表面利回り・想定利回りは参考程度にとどめておき、基本的には諸経費を加味した実質利回りを自分自身で計算することをおすすめします。

表面利回り・想定利回りの計算方法

表面利回り・想定利回りの計算方法

不動産投資において、投資用物件の利回りは必ず確認すべき重要な指標です。

まずは簡単に算出できる表面利回りと想定利回りの計算方法を理解しておきましょう。

表面利回りの計算方法

不動産投資における表面利回りの計算式は以下のとおりです。

表面利回り(%)=年間家賃収入÷購入金額×100

たとえば、販売価格が6,000万円、総戸数10戸で入居状況が7戸のマンションがあり、ひと月の家賃を5万円と仮定します。

年間家賃収入=5万円×7戸×12か月=420万円
表面利回り=420万円÷6,000万円×100=7%

この物件の表面利回りは7%となります。

想定利回りの計算方法

不動産投資における想定利回りの計算式は以下のとおりです。

想定利回り(%)=満室時の年間家賃収入÷購入金額×100

たとえば、販売価格が6,000万円、総戸数10戸がすべて埋まっているマンションがあり、ひと月の家賃を5万円と仮定します。

年間家賃収入=5万円×10戸×12か月=600万円
想定利回り=600万円÷6,000万円×100=10%

この物件の想定利回りは10%となります。

実質利回りの計算方法

表面・想定利回りは、不動産投資において発生するさまざまな諸経費が加味されていません。

現実に即した利回りを把握するためには、諸経費を考慮して算出する実質利回りの計算方法を理解し、自分でシミュレーションしてみることが大切です。

不動産投資における実質利回りの計算式は以下のとおりです。

実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間支出)÷(購入金額+購入時の諸経費)×100

たとえば、マンション一室の販売価格が3,000万円、購入時の諸経費が200万円、ひと月の家賃が10万円、年間支出が24万円と仮定します。

(120万円-24万円)÷(3,000万円+200万円)×100
=96万円÷3,200万円×100
=3%

この物件の実質利回りは3%となります。

ちなみに同条件で表面利回りを計算すると「4%」(120万円÷3,000万円×100)となるため、表面と実質のどちらで計算するかによって得られる利益の目安は大きく変わってくることがわかります。

多くの物件を見比べて検討する段階であれば表面・想定利回りでも参考になりますが、そこから購入する物件を絞り込んでいく段階に入ったら、具体的な諸経費やその金額も考慮しながら実質的な利回りを計算するとよいでしょう。

不動産投資の利回りをシミュレーション

不動産投資の利回りをシミュレーション

ここからは、より具体的に不動産投資の利回りをシミュレーションしていきます。

物件1. 都心の新築区分マンション

都心の新築区分マンションを想定し、物件価格や家賃金額、その他諸経費について下表にまとめました。

立地 東京都墨田区
物件 1LDK
物件金額 4,800万円
家賃金額 12.5万円/月
購入時の経費 480万円
管理費 1.5万円/月
修繕積立金 1,500円/月
集金代行手数料 4,000円/月

(※記載している物件・諸経費の金額はすべて架空のもの)

表面利回り

上記の条件を用いて表面利回りをシミュレーションします。

年間家賃収入=12.5万円×12か月=150万円
表面利回り=150万円÷4,800万円×100=3.125%

この物件の表面利回りは3.125%となります。

実質利回り

上記の条件を用いて実質利回りをシミュレーションします。

年間家賃収入=12.5万円×12か月=150万円
年間支出=1.5万円×12か月+1,500円×12か月+4,000円×12か月=24.6万円
実質利回り=(150万円-24.6万円)÷(4,800万円+480万円)×100
=125.4万円÷5,280万円×100
=2.375%

この物件の実質利回りは2.375%となります。

物件2. 地方の中古区分マンション

地方の中古区分マンションを想定し、物件価格や家賃金額、その他諸経費について下表にまとめました。

立地 宮城県仙台市
物件 2DK
物件金額 1,500万円
家賃金額 6.5万円/月
購入時の経費 150万円
管理費 6,800円/月
修繕積立金 1,000円/月
集金代行手数料 2,000円/月

(※記載している物件・諸経費の金額はすべて架空のもの)

表面利回り

上記の条件を用いて表面利回りをシミュレーションします。

年間家賃収入=6.5万円×12か月=78万円
表面利回り=78万円÷1,500万円×100=5.20%

この物件の表面利回りは5.20%となります。

実質利回り

上記の条件を用いて実質利回りをシミュレーションします。

年間家賃収入=6.5万円×12か月=78万円
年間支出=6,800円×12か月+1,000円×12か月+2,000円×12か月=11.76万円
実質利回り=(78万円-11.76万円)÷(1,500万円+150万円)×100
=66.24万円÷1,650万円×100
=4.01%

この物件の実質利回りは4.01%となります。

不動産投資で利回りを考えるときの注意点

不動産投資で利回りを考えるときの注意点

不動産投資で利回りを考えるときに注意したいポイントを以下にまとめました。

物件情報に記載されている利回りの種類を確認する

不動産投資で物件探しをする際は、不動産業者の情報誌やコーポレートサイトなどに記載されている利回りの種類を確認しましょう。

基本的には表面利回りもしくは想定利回りにて計算されており、不動産投資を行う過程で発生するコストは考慮されていません。

不動産投資で諸経費がゼロになることはないため、実際には表面・想定利回りの数字よりも低い利回りとなります。

加えて、「表面利回り」の記載があっても、それは満室時を想定した「想定利回り」で計算している可能性があることにも注意が必要です。

数字に左右されず物件の資産価値を見極める

不動産投資においては、利回りの数字だけに左右されず、その物件の資産価値を見極めることが重要です。

利回りは物件を探したり選んだりするうえで重要な指標にはなるものの、掲載されている情報はあくまで目安であることを理解しておかなければなりません。

実質利回りで計算するにしても、その諸経費は物件経営を始める前の、現時点で想定できる諸経費となります。

実際に経営を始めてみると、空室が発生して家賃収入が入ってこなかったり、建物の経年劣化により年々維持費が上昇していったりすることも考えられます。

不動産投資で利回りを考えるときは、その数字が現時点で想定されるものであることを理解し、数字だけに振り回されないようにしましょう。

高利回り物件が「理想の物件」とは限らない

利回りとは「投資額に対する年間収益の割合」であり、利回りが高ければ高いほど多くの収益が得られると考えがちです。

しかし、不動産投資において利回りを計算する際は、空室期間は発生しないものとして計算するのが一般的です。

そのため、高利回り物件であっても賃貸需要が少なく、空室発生のリスクが大きい物件には注意しなければなりません。

一般的に、都心よりも地方、新築よりも中古の方が利回りは高くなる傾向があります。

しかし、賃貸需要が大きく空室をつくりにくいのは、地方よりも都心、中古よりも新築です。

利回りが低くても空室リスクが少ない物件は、常に安定して家賃収入を得られる可能性が高いといえます。

高利回りであることが「理想の物件」とは限らないため、利回りの高さだけを重視せず、価値や需要の面で安定的な収益が期待できる物件を選ぶことが重要です。

まとめ

まとめ

不動産投資における利回りとは、大きく「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。

より実質的な利回りを把握したい場合は、物件購入・経営で発生する諸経費を含めて計算することが大切です。

インターネット上で簡単にシミュレーションできるツールもあるため、候補の物件があればツールを用いて計算してみるとよいでしょう。

ただし、不動産投資の物件を選ぶ際は利回りだけに左右されず、その物件の価値や需要の見極めが重要となります。

利回りに限らず、不動産投資に関する疑問は実績豊富な不動産投資会社に相談し、プロのアドバイスを受けながら始めることをおすすめします。

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