不動産投資のよくある詐欺の手口と対策法・相談窓口を紹介
リスクとリターンのバランスが良く、長期的に安定した収益を期待できる不動産投資。
老後の資産形成やサラリーマンの副業としても人気の高い投資方法ではあるものの、投資の知識や経験の少ない初心者を騙し、不動産投資詐欺を働く悪徳業者も少なからず存在します。
この記事では、不動産投資詐欺のよくある手口とともに、トラブルを回避するための対策と被害に遭った場合の相談窓口について解説します。
不動産投資に興味のある方、これから始めてみたい方はぜひ参考になさってください。
不動産投資詐欺にありがちな5つの手口
不動産投資とは、アパートやマンションなどの現物不動産を購入・運用し、家賃収入や売却益を得る投資方法のことです。
物件の管理は管理会社に任せることもできるため、賃貸運営のノウハウを持っていない初心者も始めやすい投資といえます。
一方で、悪意のある手法で不動産投資に関心を持つ人を騙す「不動産投資詐欺」には十分に注意しなければなりません。
ここでは、不動産投資詐欺にありがちな手口を5つご紹介します。
1. 手付金詐欺
手付金とは売買契約時に買主が売主に支払うお金のことで、契約成立の証拠や解約の権利、債務不履行があった場合の違約金などの役割を持ちます。
不動産投資における手付金詐欺とは、不動産会社に手付金を支払った後に連絡がとれなくなり、手付金を持ち逃げされてしまう手口のことです。
手付金詐欺に引っかかると、先に支払った手付金を奪われるだけでなく、物件そのものも手に入れることができなくなります。
手付金詐欺を働く業者は、好条件の物件を勧める際に「すぐに売れてしまう」「他にも購入希望者がいる」などと言い、今すぐに手付金を支払って物件を押さえておくべきと強くアピールします。
物件を購入するメリットばかりを強調し、強引に契約を催促してくる不動産会社には注意した方がよいでしょう。
過去の実績や口コミなどを確認して信頼できる不動産会社かどうか確かめること、営業マンのセールストークにのせられないように気をつけることが大切です。
2. サブリース詐欺
サブリースとは、サブリース会社が物件を一括して借り上げし、その物件を入居者に転貸する管理形態のことです。
サブリース契約を結ぶと空室が発生しても一定の保証賃料を得られるため、不動産投資で避けるべきリスクの一つである「空室リスク」の心配がなくなります。
この仕組みを利用したのがサブリース詐欺で、サブリース契約を結んでいても家賃が支払われない手口をいいます。
サブリース契約の保証賃料はずっと一定額とは限らず、契約期間中に金額が見直されることがあります。
多くの場合は2年ごとに保証賃料の見直しが行われ、見直し後は基本的に金額が下がると考えておいた方がよいでしょう。
しかし、不動産投資詐欺の手口では「半永久的に金額を下げない」「10年間の家賃を保証する」などの言葉で契約させ、保証賃料の見直しのタイミングで大幅な値下げを行います。
不動産投資においてサブリース契約を検討する場合は、保証賃料見直しの期間や免責期間、解約条件などを契約前にしっかりと確認し、納得したうえで契約を結ぶことをおすすめします。
3. 満室偽装詐欺
不動産投資における満室偽装詐欺とは、実際には多くの空室が生じているにもかかわらず、あたかも満室状態であるかのように見せかける手口のことです。
満室物件であると偽装することで、そのエリアには賃貸需要があり物件の収益性も高いのではないかと契約者に思わせることができ、相場よりも高い物件価格を提示しやすくなります。
しかし、実際のところはサクラを使って入居状況をごまかしているだけのため、購入後に次々と退去されてしまい、空室ばかりの本来の物件に戻ってしまいます。
空室が発生すると不動産投資の収入源である家賃収入が得られず、不動産経営の継続が困難になる可能性があります。
満室偽装詐欺を見抜くには、不動産の賃貸借条件をまとめて参照できる「レントロール」を確認するとよいでしょう。
ただし、こうした詐欺を働く会社はレントロールそのものも偽装しているおそれがあるため、記載された内容をそのまま鵜呑みにするのも少々危険です。
不動産投資詐欺のなかでも見抜きにくい手口といえるでしょう。
4. 二重譲渡詐欺
不動産投資における二重譲渡詐欺とは、一つの物件に対し複数人に売却を持ちかけ、故意に代金を騙し取る手口をいいます。
同じ物件を複数の買主に売却したとしても、その物件の所有権は一人しか得ることはできません。
たとえば買主Aが登記を変更する前に別の買主Bが登記手続きを完了させていた場合、その物件の所有権は買主Bが持つことになります。
二重譲渡詐欺に引っかかった買主Aは購入代金を奪い取られた挙句、物件も取得することができないということです。
このような事態を回避するためには、第三者が自分よりも先に登記手続きを行っていないか、事前に物件の登記内容を確認しておくことが重要です。
購入代金を支払っていたとしても、不動産の所有権は登記をしたかどうかで決まるため、トラブル防止の対策として登記の内容は見ておいた方がよいでしょう。
5. デート商法詐欺
不動産投資におけるデート商法詐欺とは、マッチングアプリや婚活サイトを利用してターゲットと親密な関係をつくり、投資用不動産の購入を勧める手口をいいます。
恋愛感情が湧き立つタイミングを見計らって投資話を持ちかけるため、なかなか断り切ることができずに話に乗ってしまうのがよくあるデート商法詐欺の手口です。
恋愛感情を利用した悪質な手口で、投資話に不信感を抱いたとしても情が湧いた後では断りづらく、仕方なく契約してしまうケースも多いようです。
デート商法詐欺に騙されないためには、マッチングアプリや婚活サイトで出会った相手の投資話・儲け話には乗らないことが第一です。
また、このような話を持ちかけられた場合は信頼できる第三者に相談し、冷静な意見を聞くようにすることをおすすめします。
警戒すべき不動産業者の特徴
不動産投資詐欺の被害に遭わないようにするためには、注意が必要な怪しい不動産業者の特徴を知っておくことが大切です。
ここでは、不動産投資詐欺に警戒すべき業者の特徴をご紹介します。
強引に契約を急かしてくる
不動産投資詐欺を働く業者の特徴に、強引なセールストークで契約を急かしてくることが挙げられます。
「本日中に契約すると値引きできる」「人気の物件で次までに残っているかわからない」など、いったん持ち帰って検討する時間を与えないように、すぐに契約するよう促してきます。
畳み掛けるようなしつこいセールストークをされた場合は、その内容は本当に信頼できるものなのか、契約をさせるための甘い言葉ではないかと考え、言われるがままに契約手続きを進めないことが大切です。
リスクやデメリットの説明をしない
ミドルリスク・ミドルリターンの投資といわれ、比較的安定した収入を長期的に得やすい不動産投資。
しかし、リターンのある投資にリスクは必ずついてくるため、メリットばかりを強調した説明をする不動産業者には注意しなければなりません。
不動産投資の良い面だけでなく、リスクやデメリットについても丁寧に説明してくれる業者を選びましょう。
注意が必要な不動産業者の言動には「節税できる」「生命保険や年金の代わりになる」「将来値上がりする」などが挙げられます。
このような言葉はそのまま鵜呑みにするのではなく、なぜ節税できるのか、値上がりする根拠はあるのかなど、そのメリットが生じる仕組みについて詳しく説明してもらうようにしましょう。
物件の詳細を明確にしていない
不動産投資詐欺に引っかからないためには、物件情報の詳細を明確に表示していない会社にも注意が必要です。
不動産投資に関心がある人を呼び寄せる手口として、実際には取り扱っていない「おとり物件」を広告に掲載することがあります。
条件の良い優良物件をおとりに、問い合わせをさせたり店舗に足を運ばさせたりし、実際に紹介するのは別の物件という悪質な手口です。
魅力的な物件があれば急いで問い合わせをしたくなるものですが、情報が少なすぎる物件はまずはおとりであることを疑った方がよいでしょう。
不動産投資詐欺・トラブルを防ぐための対策
不動産投資の詐欺やトラブルを未然に防ぐための対策には以下が挙げられます。
不動産投資の知識を身につける
不動産投資詐欺を防ぐためには、不動産投資の基礎知識を身につけておくことが大切です。
不動産投資について勉強すると、どのようなリスクやデメリットが起こり得るのかわかるため、不動産投資詐欺にありがちな甘い言葉に騙されることはなくなります。
書籍やインターネットの情報からでも勉強できますが、不動産投資のプロから直接アドバイスを受けたい場合は、不動産投資会社が主催するセミナーや相談会に参加することをおすすめします。
管理会社を入れる
不動産投資によるトラブルを回避するためには、入居者の対応や物件の管理を一任できる管理会社を入れるとよいでしょう。
オーナーが賃借人と直接契約を結ぶことも可能ではあるものの、その場合は何かトラブルが起きた際にオーナー自身が対応しなければなりません。
間に管理会社を入れておけばトラブルの対処を管理会社に任せられるため、初心者の方や本業があるサラリーマンも不動産投資を始めやすくなるでしょう。
信頼できる不動産投資会社を選ぶ
不動産投資詐欺やトラブルを未然に防ぐには、信頼できる不動産投資会社を見つけることも重要です。不動産投資会社を選ぶ際は以下のようなポイントを重視するとよいでしょう。
- 会社の業績・実績
- 金融機関との取引状況
- 営業担当者の知識レベル
- 物件周辺の土地勘
- お客様の声・口コミ
不動産投資会社・営業担当者の対応としては、物件に存在するリスクやデメリットについても具体的に説明してくれるか、こちらが質問したことに迅速・丁寧に回答してくれるかなどもチェックしておきたいポイントです。
あとから後悔しないように、不動産投資会社選びは慎重に行いましょう。
不動産投資詐欺に遭った場合の相談窓口
不動産投資詐欺に遭ったときの相談窓口を以下にまとめました。
不動産投資関連のトラブルに巻き込まれた場合は早めに専門家や相談機関を頼り、今後の動き方について助言を受けることをおすすめします。
弁護士
不動産投資詐欺の被害にあった場合は、法律の専門家である弁護士に相談することができます。
ただし、弁護士によって得意な分野はそれぞれ異なるため、不動産投資詐欺であれば不動産関連のトラブルに実績を持つ弁護士事務所を選ぶとよいでしょう。
法テラス
法テラス(日本司法支援センター)とは、さまざまな法的トラブルに対応する総合案内所です。
問い合わせに対する情報提供のほか、経済的に余裕がない方を対象に専門家の無料相談にも対応しています。
経済的な理由から弁護士への相談が難しい場合や、どの弁護士事務所を選べばよいかわからない場合は、まずは法テラスに相談してみることをおすすめします。
消費者ホットライン
消費者ホットラインとは、消費者庁が設置した消費者生活相談窓口を案内する全国統一番号のことです。
「188」に電話をかけると、相談を受け付けている近くの市区町村や都道府県の消費生活センターを案内してもらえます。不動産投資詐欺・トラブルに遭った際の最初の一歩となるでしょう。
まとめ
不動産投資詐欺にありがちな手口としては、契約時の手付金を騙し取る「手付金詐欺」や保証賃料を大幅に下げる「サブリース詐欺」、入居状況をごまかして満室に見せかける「満室偽装詐欺」などが挙げられます。
これらの詐欺やトラブルに引っかからないようにするには、まず不動産投資を行う本人が知識を身につけることが大切です。
悪質な詐欺を働く不動産業者はメリットばかりを強調したセールストークを行いがちのため、不動産投資のリスクやデメリットを理解していれば、営業マンが発する甘い言葉にも騙されにくくなります。
これから不動産投資を始める方は、不動産投資の知識や経験が浅い初心者をねらう詐欺行為があることを把握したうえで、詐欺の具体的な手口や対処法について知っておく必要があります。
まずは不動産投資の正しい知識を身につけ、詐欺やトラブルを回避しましょう。