「税金対策で不動産を購入する」といった話を聞いたことがある方もいることでしょう。
「海外セレブが税金対策にいくらの家を購入した」などといったニュースも見られます。
海外の税法と日本の税法は異なる点もありますが、日本においても不動産投資で節税をすることが可能です。
そこで今回は、不動産投資における節税の仕組みと対象になる税金、失敗しないコツを解説します。
目次
不動産投資が節税対策になる仕組みと具体的なケース
税金対策としても使われる不動産投資には、2つの方法による税金対策があります。
それは損益通算と減価償却の2つであり、それぞれ税金を安くする効果を持っています。
本業の給与所得から損失分を差し引く「損益通算」
不動産投資には損益通算が認められています。
損益通算とは、不動産投資で損失が発生した場合、その損失分を本業の所得から引けるというものです。
これにより、本業の所得額が圧縮され、それに伴い本来払うべき税額も安くなります。
つまり、不動産所得がマイナスの場合に適用される減税の仕組みなのです。
「減価償却」の対象として計上
不動産の中でも、建物においては経年劣化を伴うことから、減価償却が認められています。
減価償却とは、経年劣化を考慮して計算された額を、所得から引けるというものであり、建物は年数の経過とともに、価値が下がることを考慮した考え方です。
減価償却資産により、所得額が圧縮され、本来払うべき税額も安くなるのです。
不動産投資で節約対象になる税金の種類
上記では不動産投資が、節税につながることを解説しましたが、節税につながる税金には、いくつかの種類があります。
それが、所得税と住民税、相続税と贈与税です。
どのような仕組みで節税につながるのかを解説します。
所得税・住民税
所得税、住民税は年間の総所得金額に応じて課税されるため、不動産投資で赤字が出た際に、損益通算を行うことによって、総所得金額を下げることができます。
その方法とは、確定申告を行うことです。
赤字を報告することで、課税対象となる総所得金額が下がり、それに伴い納税額も下がるというものです。
確定申告の方法については、青色申告、白色申告どちらでも可能ですが、青色申告の方が、より節税効果は大きくなります。
相続税・贈与税
相続の際、現金を相続することと比較して、不動産を相続する方が税額を抑えることができます。
これは、現金と不動産では課税率が異なるためであり、不動産の方が低い課税率となっているためです。
贈与税も同様で、現金の贈与による贈与税よりも、不動産の譲渡による譲渡所得の方が税率は低くなっています。
不動産投資で所得を得る際、個人事業主の事業所得として計上するよりも、法人化して計上する方が低い税率になることがあります。
節税効果を上げるために、配偶者を法人の役員にするケースもあります。
不動産投資の節税効果をシミュレーションで確認
不動産投資における節税効果を、数字を用いて解説してます。
所得税、住民税については、1年間の総所得金額に応じて課税されるため、不動産投資で赤字が出た際に損益通算することによって、節税につながります。
仮に年収1,000万円の給与所得があるサラリーマンが通常通りに納税した場合、納税額は約500万円になります。
しかし、不動産投資で200万円の赤字が出した場合、1,000万円の収入と損益通算することによって、総所得金額は1,000万円 - 200万円 = 800万円となり、課税所得が圧縮されます。
800万円にかかる課税額は約400万円のため、本来の払うべき金額である500万円と比較すると、100万円の節税効果が現れます。
減価償却の考え方も同様で、不動産取得額を決められた耐用年数で割り込むことにより、一定額を所得から引くことができます。
減価償却は、戸建てやマンション等に対応した計算方法となっています。
定額法となった現在では節税目的での不動産投資はおすすめできない
税法の改正により、減価償却の計算方法が中古・新築関係なく定額法に変更となりました。
建物の取得額を均等に分割し、収入から引くという計算法がとられるようになったのです。
これにより、修繕費用があまりかからない現在と、かかることが予想される未来では所得額に差が生まれてしまうため、節税効果が薄まってしまうのです。
現在では、減価償却を目的とした節税効果は、あまりおすすめできないものとなってしまいました。
節税対策は期待できるが損失になる可能性も
不動産投資において、利益圧縮のために経費を増やし赤字を出し続けていると、節税効果は期待できますが、損失が膨らむ可能性もあります。
また、不動産投資には、固定資産税や管理費等の経費も多くかかるため、収入と経費のバランスを取ることも大切です。
節税をすることはとても大切なことですが、不動産投資本来のパフォーマンスを向上させることを最優先することをおすすめします。
不動産投資の目的は「節税」よりも「長期的な収入」
不動産投資の本来の目的は、家賃収入によるインカムゲインの確立であり、節税ではありません。
月々の家賃収入を上げることによって、長期的な収入の確保が大切だといえます。
節税対策で失敗しないための注意点
節税を行う上で、押さえておきたいポイントがあります。
それは、収入による税金の増加と物価下落による資産価値の低下、赤字経営による金融機関の印象悪化です。
収入による税金の増加
不動産投資で利益が出ると課税対象になり、利益が大きくなればなるほど、課税額も膨らみます。
しかし、一度払ってしまった税金は返ってこないため、利益の平準化を行い、長期的な目線でとらえ投資生活を継続させていくことが必要です。
収入額に応じて税金も増加してしまうため、節税効果をうまく使っていくことが大切です。
物価下落による資産価値の低下
不動産投資においては、社会情勢や経済情勢の影響で資産価値が下落することが起こります。
そのため、売却時に評価額が下落している可能性はゼロではありません。
将来を見据えた、適正な金額で不動産を購入することが大切です。
赤字経営による金融機関の印象悪化
赤字経営が続くと、金融機関からの印象が悪化し、融資に不利益が生じる可能性があります。
3年連続赤字は避けることを1つの目安としたほうがいいでしょう。
安定した経営をアピールすることで、金融機関との友好関係を築くことも大切です。
節税効果が高いのは国内よりも海外の不動産投資
節税効果を狙うのであれば、国内不動産よりも、海外不動産の方が節税には有効的です。
理由は、物件自体の価値が高いため、減価償却費を大きくとれることや、そもそもの税率が低い地域もあることなどが挙げられます。
しかし、海外ではローンを組むことのハードルが高いため、多くの自己資金を必要とする場合があります。
まとめ
不動産投資には節税効果があり、上手に使えば、長期的に安定した収益を得ることができます。
しかし、不動産投資を行う際は、節税ばかりに気をとられないように、本来の目的である家賃収入の確保に努めることが大切です。
かえって損失とならないためにも、不動産投資で節税を行うときの注意点を押さえるようにしましょう。