本やブログ、webサイトなどでは、高利回り・低リスクのトランクルーム投資が取り上げられています。
しかし投資を続けていくなかで、詐欺の被害に遭ってしまうのではないかと不安に感じる方も少なくありません。
今回はトランクルーム投資に興味をもっている方に向けて、投資の始め方や利回り、メリット・デメリットなどを解説します。
また、失敗を避けられるような運営方法も紹介していきますので、お悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
市場規模拡大中?!トランクルーム投資とは?
トランクルーム投資は、屋内・屋外に設けたスペースを貸し出して、賃料を得る投資です。
コンテナを置ける広さがあれば、狭い土地でもトランクルーム投資をおこなうことができます。
トランクルーム最大手のキュラーズが発表した調査結果によると、2008年から市場規模は右肩上がりに成長しており、2025年で1,000億円を突破する巨大市場になるといわれています。
これから投資を始めたい方にはおすすめの投資方法です。
ルーム型トランクルームならすぐに設置可能
賃貸用のトランクルームは、専門業者から誰でも1基50万円~100万円ほどで購入できるようになっています。
このトランクルームを土地に設置し、前に駐車場をおけば、すでにサービスは開始できます。
ただ、これだけではサービスかどうかわからないので、利用者募集中の看板を立てておくのがおすすめ。
この3つの作業は合計で200万円あれば最低限のものを設置することができます。
利益はルームの数に比例
収納スペースは1部屋ごとに契約をするので、部屋数が多いほど高利益が見込めます。
1基をどこまで区切れるかが問題ですが、標準的なサイズであれば6部屋にまで区切っても十分な広さを保てると言われています。
それ以上区切っても狭すぎて借り手がつかなくなってしまうので注意しましょう。
また、たとえ6部屋に区切ったとしても余程アクセスの良い立地でなければ満室になることはありません。
あまり数が見込めないのであれば、部屋数を減らして広く使えるようにし、1部屋あたりの単価を上げるという方法もおすすめです。
トランクルームの経営方式
トランクルーム経営には様々な方式があり、選択した方式によって発生する投資額やリスク、経営の自由度などが変わってきます。
また、ここで紹介する4つの経営方式のうち3つは、トランクルーム業者と契約を交わして、経営を行います。
経営方針次第では、経営者ニーズに合わない等のトラブルにつながることもあります。
ここからは、各経営方式に見られる特徴とメリット・デメリットについて紹介します。
フランチャイズ方式
フランチャイズ方式は、既存のトランクルームブランドの下で経営を行う方法です。
これには、ブランドのノウハウやシステムを受け継ぐことができる大きなメリットがあります。
初心者や経営経験が少ない人でも安定して運営を開始することができるでしょう。
しかし、一方でロイヤリティや初期費用がかかること、自由な経営が難しいというデメリットもあります。
また、ブランドの方針やイメージに合わせる必要があるため、独自性を出すのが難しい場合があります。
一括借り上げ方式
一括借り上げ方式は、土地や建物を所有していない経営者が、他者の土地や建物を一括で借り上げ、それをトランクルームとして転貸する方法です。
初期投資を抑えることができ、リスクを分散するメリットがあります。
しかし、借り上げ料や更新料のコストがかかることや、建物の老朽化に伴うリスクがある点がデメリットとなります。
管理委託方式
管理委託方式は、土地や建物の所有者が、トランクルーム経営のプロフェッショナルな企業や経営者に経営を委託する方法です。
土地や建物の所有者にとっては、専門知識がなくても安定した収益が見込めます。
さらに、経営者にとっては、初期投資や土地の取得リスクの軽減につながります。
しかし、利益の分配や経営方針についての調整が必要になる場合があります。
自営方式
自営方式は、経営者が土地や建物を所有し、トランクルームの経営全体を自ら手掛ける方法です。
最も自由度が高く、ブランドやサービスの独自性を追求しやすいというメリットがあります。
また、全ての収益を自分で取得できる点も魅力です。
しかし、その分、初期投資が大きく、経営のノウハウやリスク管理が必要になります。
トランクルーム投資のメリットとデメリット
すでにトランクルーム投資をおこなっている方がいる一方、詐欺などの被害を懸念して投資に踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
トランクルーム投資をおこなう前に、投資のメリットとデメリットを把握しておきましょう。
メリット
トランクルーム投資のメリットは以下の4つです。
- 利回りが高い傾向にある
- コストを抑えられる
- トラブルが起きにくい
- 老朽化による賃料への影響が少なめ
それぞれについてみていきましょう。
利回りが高い傾向にある
トランクルーム投資はアパート・マンションの不動産投資と比べて、利回りが高いといえます。
利回りとは、投資した金額に対する収益の割合のことです。
そのため、初期費用とランニングコストが低くければほかの不動産投資よりも高い利回りが見込めます。
しかし、トランクルーム投資は空室が埋まるまでに時間がかかります。
稼働率が安定するまでは、赤字が出る可能性もあるでしょう。
コストを抑えられる
不動産投資でマンションなどの中古物件を購入すれば、内・外装の工事やリフォーム工事に加えて、給排水・エレベーターのメンテナンスが必要となります。
一方トランクルーム投資では最低限の内装工事のほか、照明や空調設備、防犯カメラの設置など比較的少額の費用で済んでしまうため、投資にかかるコストを抑えられます。
トラブルが起きにくい
マンションなどでは居住を前提とするため、住人による騒音トラブルをはじめ、多くのトラブルが起こる可能性があります。
しかしトランクルーム投資の場合、通路・駐車場でのトラブルや食べ物の保管によるトラブルなど、トラブルの範囲が限定されており、人を原因とするトラブルは少ないといえるでしょう。
また設備機器のトラブルも、照明や空調、セキュリティー機器のトラブルに限定されます。
故障の程度にもよりますが、軽度の故障のうちに修理することで、設備の交換にかかる費用も抑えることができます。
老朽化による賃料への影響が少なめ
マンションなどの不動産投資は、建物の老朽化が進むと集客に影響が出てきてしまいます。
そのため、賃料を引き下げるなどの対策を取り、空室率を下げる必要があります。
一方、トランクルーム投資は資材や家具などの保管場所を提供するものなので、仮に建物・コンテナの老朽化が進んだとしても賃料を下げる必要はほとんどありません。
デメリット
トランクルーム投資のデメリットは以下の3つです。
- 競合が多い
- 空室リスクが高い
- 立地・サイズによっては需要が少ない場合もある
それぞれについてみていきましょう。
競合が多い
トランクルーム投資のデメリットは、競合の多さです。
高い利回りを目当てにした参入が多く、トランクルーム投資の市場は活気を帯びています。
このような状況から、トランクルームの需要が多い地域であっても、利用客が競合に流れてしまうことが多いのです。
空室リスクが高い
トランクルーム投資のデメリットには、空室リスクの高さも挙げられます。
生活を送るうえで必須のサービスではありませんし、トランクルームの存在を知らない人も少なくありません。
トランクルームの稼働率が8割を上回るには、1~3年ほどの期間が必要になります。
利回りの高さだけに注目せず、高い空室リスクを考慮したうえでトランクルーム投資をおこないましょう。
立地・サイズによっては需要が少ない場合もある
トランクルーム投資では、立地・サイズによる需要の少なさもデメリットに挙げられます。
個人に利用を促しているのに、収納スペースのサイズが過度に大きかったり、オフィス街・駅前に設置していたりすると、利用者の数が増えずに空室期間が長引きます。
また、企業に利用を促しているのに収納スペースが小さかったり、郊外・住宅街などに設置していたりする場合も需要が少なくなってしまうのです。
トランクルーム投資の利回り
トランクルーム投資では、利回り(投資額に対する収益の割合)の把握が必須です。
利回りには、経費を含まない表面利回りと、経費を含める実質利回りがあります。
トランクルーム投資をおこなうなら、実際の経営に近い実質利回りを押さえておきましょう。
表面利回りと実質利回りは、以下のように計算できます。
実質利回り={(年間の家賃収入-年間の経費)÷(初期費用)}×100
たとえばフランチャイズ方式で自分の土地(50坪)に25部屋のトランクルームを構えた場合、以下のような利回りが計算されます。
敷地:自己所有
坪数:50
部屋数:25
初期費用 | 1,000万円 |
---|---|
月間の売上 | 約25万円 |
年間の売上 | 約300万円 |
月間の支出 | 約3万円 |
年間の支出 | 約36万円 |
表面利回り | 約30% |
実質利回り | 約26% |
※利回りは、満室を想定して算出
出典:株式会社ユーティライズ Utilize Co.,Ltd./収支シミュレーションより
始め方を解説
投資の失敗を避けられるよう、トランクルーム投資の始め方を解説します。
トランクルーム投資は、以下のような流れで進みます。
- 現地・市場調査
- 収益・工事費・維持費などのシミュレーション
- 運営方式と管理会社の決定
- 初期費用の用意
- 物件・コンテナの用意
- 建築確認申請(屋外型の場合)
- 基礎工事、内装工事、セキュリティー・パーティションなどの設置
- 検査(建物が法律の基準を満たしているかどうか)
- 引渡し
- 運営の開始
上記のなかでも気になるのはやはり初期費用ではないでしょうか。
ここからは、トランクルーム投資にかかる費用について解説していきます。
トランクルーム投資にかかる費用
トランクルーム投資では初期費用として、100万~1,000万円ほどがかかります。
たとえば屋外にコンテナを置く場合、300万~1,000万円ほどの費用が想定されています。
また、既存の建物内に収納スペースを設ける場合は、100万~600万円ほどの費用がかかることが多いです。
屋外ならコンテナの数に応じて初期費用がかさみますし、屋内なら内装工事代が発生します。
もちろん、状況によってこれらの費用は変わっていくので。目安の金額と考えておきましょう。
不動産投資と比べて初期費用は安いといえますが、まとまった費用を要するのに変わりはありません。
トランクルーム投資の費用を抑えるために、節税対策をしておきましょう。
たとえば、コンテナは法人税を算出するときに器具備品として扱われます。
耐用年数が短く、小型なら3年、大型なら7年での減価償却が可能なので、節税のメリットも多く得ることができます。
ただし、コンテナには建物の耐用年数を適用しなさいとの更正処分が下った事例も見られるので、過度に期待することは控えましょう。
効率的に経営するためには?失敗しないためのポイントを解説
本や投資家のブログ、運営会社のサイトなどに目を通しても、効率的なトランクルーム投資を想像できないという方も多いのではないでしょうか。
投資が失敗に終わらないよう、ここからは効率的なトランクルーム投資の運営について解説していきます。
長期的に安定した収益を得ることを目標にする
トランクルーム投資は高い利回りが魅力ですが、稼働率の上昇が緩やかであるため、少額の収益を長期間にわたって得られるような運営が求められます。
デメリットの項目でも解説したように、稼働率が8割を超えるまでは1~3年ほどの期間が必要とされます。
短期間で大きく儲けられる投資とはいえないので、徐々に稼働率を上昇させて、収益を高めるようにしましょう。
事前調査を徹底的におこなう
闇雲にトランクルーム投資をおこなってしまうと、失敗する確率が上がります。
失敗する確率を下げられるよう、事前調査に力を入れましょう。
調査する項目は、以下のとおりです。
調査項目 | 詳細 | |
---|---|---|
市場調査 | 人口・年齢・住宅 | ・出店予定エリアの人口 ・年代別の人口 ・世帯数 ・平均年齢 ・戸建、共同住宅比率 |
競合 | ・競合の数(約半径3キロメートル圏内) ・近隣の料金相場・坪単価 ・トランクルームの種類(屋内・屋外) ・駐車場の有無 ・管理状況 |
|
立地 | 出店可能エリア | ・第二種中高層住居専用地域 ・第一住居地域 ・第二種住居地域 ・準住居地域 ・近隣商業地域 ・商業地域 ・準工業地域 ・工業地域 ・工業専用地域 |
レイアウト | ・現地調査を踏まえた完成図面の作成 ・レンタブル比の決定(通常55~59%) ・利用者の需要に合わせて収納スペースの広さを決める ・コンテナの入り口に車を駐車できる配置を考慮(屋外) ※レンタブル比=トランクルームの総床面積÷総床面積×100 |
|
設備 | 屋内 | ・空調設備 ・照明設備 ・防犯カメラ ・警備システム ・二重ロック ・台車 ・エレベーター・トイレ など |
屋外 | ・照明 ・防犯カメラ ・警備システムの導入 ・頑丈な鍵 ・二重ロック ・フェンス など |
トランクルームの種類・運営方法選びを慎重におこなう
トランクルーム投資では、トランクルームの種類・運営方法によって、稼働率や利回りなどが変化します。
複雑なところも多いため、以下の表にトランクルーム投資の種類と運営方法をまとめました。
それぞれの特徴を把握し、リスクを抑えてからトランクルーム投資をおこないましょう。
トランクルームの種類
トランクルーム投資の種類 | 特徴 |
---|---|
屋内型 | ・既存の建物を利用して収納スペースを設ける ・パーティションを設置して1部屋をつくる ・東京の周辺に多い ・リフォーム費用(200~500万円ほど) ・床面積が200平米以上なら用途変更が必要 ・ランニングコストが高い |
屋外型 | ・空いている土地にコンテナを置くタイプ ・平置きのほか、2階建ても可能 ・市街地よりも郊外に多い ・コンテナ1基の費用は100万円ほど ・ランニングコストが低い ・多くの場合、建築確認が求められる ・設置できない場所がある (第一・二種低層住居専用地域、第一種中高層住居地域、市街化調整区域) |
運営方式
運営方式 | 特徴 |
---|---|
個人運営 | トランクルーム運営のすべてを自分でこなす |
リースバック | ・業者に所有する土地、建物、設備を一括で借り上げてもらう方法 ・管理・運営を業者に任せる ・運営状況にかかわらず、毎月一定額の賃料が得られる |
業務委託 | ・所有する土地に建物・設備を用意して、自分で運営する ・業者には、集客や設備の管理などを任せる ・業者を通さないため、稼働率に比例して収入が増える |
フランチャイズ | ・本部と加盟店契約を結び、本部のサポートを受けながら管理・運営する ・営業の支援・顧客管理システムの提供などのサポートが受けられる |
事業用定期借地 | ・所有する土地を業者に貸して、地代を得る ・運営状況にかかわらず、一定の収入が得られる |
適正な賃料を設定する
トランクルーム投資では、エリア・客層に見合った賃料の設定が求められます。
収益を増やすために高い賃料を設定すれば、利用者が増えなくなってしまうおそれがあります。
トランクルーム投資をおこなう前に出店予定エリアを調査して、ライバル店の賃料・稼働率を確かめておきましょう。
たとえばトランクルーム利用の相場が1万円で、ライバル店の稼働率が低い場合、稼働率が上がっていない点から、利用者にとって1万円の賃料は高いといえます。
逆に、賃料を1万円以下に設定すれば稼働率を上げられる可能性が高くなります。
ただし、賃料を下げすぎると収益が低下するため、稼働率と得られる利益のバランスを考えて賃料を設定してください。
広告などを使って集客する
トランクルーム投資は一般的なアパート・マンションのように紹介できるサービスが整っていないため、自分でトランクルームの認知度を高める必要があります。
主な集客方法は、以下のとおりです。
- チラシの配布
- webサイトによる情報提供
- 看板の設置
- 建物を目立たせる
集客に自信がない場合、フランチャイズ方式を選んでみるとよいでしょう。
管理会社の高い集客力を活かせるため、集客にかける労力を減らせます。
リスクを把握する
高い利回りにばかり注目してリスクの把握を怠ると、大きな損をしてしまうおそれがあります。
そのため、事前に以下のリスクを把握してからトランクルーム投資をおこないましょう。
リスクの種類 | 特徴 |
---|---|
空室のリスク | 空室の継続によって賃料が得られないリスク |
賃料低下のリスク | ライバルの増加による価格競争で家賃を下げるリスク |
盗難のリスク | 鍵の開錠・破壊により保管品を奪われるリスク |
保管品劣化のリスク | 空調・換気の未設置で保管品が劣化するリスク |
保管品放置のリスク | 利用者が保管品を回収せずに放置するリスク |
違法建築のリスク | 回収する建物・コンテナが法律の基準を満たしていないリスク |
賃料滞納のリスク | 利用者から賃料が支払われないリスク |
節税のリスク | コンテナが短期間で減価償却できないリスク |
記事まとめ
今回はトランクルーム投資の概要やメリット・デメリット、利回りや費用について解説しました。
集客が難しいというデメリットはあるものの、適正な賃料・収納スペースのサイズを把握することで、比較的早い段階で空室を埋めることができます。
利回りや収益、固定費、初期費用など考慮して、自分に合った運営方法を選んでください。