アパート経営などの不動産投資を始める際には、多くの人が金融機関からの融資を利用することになるかと思います。
アパートを一棟建てるとなると、頭金として入れることのできる自己資金があるケースでも、一般住宅の価格よりも大きな額の融資を必要とする場合が多いためです。
そんなときに利用できるのが「不動産投資ローン」。
今回は、その特徴や一般的な住宅ローンとの違いを知ったうえで、不動産投資のローン審査の流れ・注意点を勉強していきましょう!
不動産投資のローンってどんなもの?
不動産投資ローンの仕組みは、アパートやマンションなどを投資用に購入する際に、その物件を担保として、銀行などの金融機関からその購入資金を借りるというものです。
一般的な住宅ローンとの違いをざっくり言えば、貸付目的が異なることによる審査基準の厳しさや金利の設定にあります。
これらの違いも絡めて、不動産投資ローンとはどういうものなのか理解していきましょう。
不動産投資のローンには3種類ある
まずは、不動産投資のローンにある主な3種類について、それぞれの特徴とあわせて、どんな人にオススメかをご紹介します。
アパートローン
アパートローンとは、各金融機関においておおよその融資条件や基準金利、審査基準などの仕様が固定化された不動産投資ローン商品の1つです。
アパート経営をなるべく早めに始めたいという、時間節約型の人にオススメの一般的なローンです。
プロパーローン
アパートローンと違い、こちらは金融機関の独自判断により審査条件が設定されるというオーダーメイド型のローンです。
対象となる物件だけでなく、ローン返済者の属性のよさに比例して審査条件も優遇され、金利も比較的低めなのがメリットです。
ある程度の時間を要しますので、時間的に余裕のある人向けのローンだと言えます。
ABS
ABS(資産担保証券)とは、投資用物件ではなく、入ってくるはずの家賃収入を担保として金融機関から融資を受けるというものです。
毎月金融機関に振り込まれた家賃から、先に返済分が天引きされ、残額がオーナーの手元に入ってくるという形です。
年間のキャッシュフロー(経費を差し引いた利益)が多く見込めそうな物件であれば、ABSを利用するのもアリでしょう。
法人契約もできる
アパート経営は賃貸事業ですので、不動産投資ローンは事業主としての法人契約も可能です。
そのため、オーナーが一般的な定年年齢を超えていても、返済額や融資期間に影響を与えない場合もあります。
一方の住宅ローンでは、契約者が対象物件に居住することがローンの条件となっていますので、法人契約はできません。
そして、ローン申請者の返済能力を考慮して、借入期間や返済年数の上限が決められてしまいます。
融資金額が高め
住宅ローンでは年収や保有資産などからローンの返済能力が審査されますが、不動産投資ローンではこれらの情報に家賃収入の可能性も加えられます。
そのため、融資金額の上限は、不動産投資ローンのほうが高くなります。
金利が高め
審査の対象が異なることにより、金融機関から見て貸し倒れのリスクの高さを考えると、住宅ローンよりも不動産投資ローンのほうがどうしても金利は高めに設定されています。
不動産投資ローンでは、空室ができた場合に家賃収入が減ると、ローンの返済も滞る可能性が高いためです。
審査基準が厳しい
企業に継続した勤務歴があり、安定した収入を望むことができると判断されれば、ほとんどの場合は住宅ローンを組むことが可能です。
一方、家賃収入が滞るリスクが常につきまとう不動産投資ローンでは、ローンの返済能力に不安要素が多いことから審査基準がより厳しくなるのです。
金融機関における融資条件や審査項目には、収益を上げることができる物件なのかどうかも含まれます。
不動産投資でローンを組む際の注意点
メリットも多い不動産投資ローンですが、実際に組むとなったときには、利益損失を出さないためにも以下の3点に注意して進めていく必要があります。
空室リスクを考慮したローン計画を立てる
賃貸事業には避けられない空室リスクは、なるべく少ないほうがよいのは当たり前の話です。
万が一、空室が出たときに、ローン返済年数・毎月の返済額などに変更が必要となる事態にならないように、無理のないローン計画を立てるようにすることが大切です。
物件選びについても、利便性の高さや築年数などを考慮して、空室リスクを少しでも下げましょう。
ローン残債を生まないために適正価格の物件を選ぶ
不動産投資ローンでどのくらいの融資を受けるのか、キャッシュフローはどのくらいが望めるのかということは、不動産投資用に購入する物件の価格が適正であることが重要なポイントです。
不動産投資会社の比較サイトを利用して、そのエリアでの物件相場を知っておきましょう。
不動産投資はマイホーム購入で不利に働く可能性がある
すでにマイホームを所有していて住宅ローンの返済を抱えている場合、不動産投資ローンの融資金額について、住宅ローンの残高分の減額を受けるケースは多いです。
逆に、不動産投資ローンを先に利用し後から住宅ローンを組む場合は、投資物件から得る家賃収入も資産とみなされるため、住宅ローンの審査に通りやすくなります。
不動産投資のローン審査の流れ
ご紹介した注意点を押さえたら、不動産投資のローン審査がどのように進んでいくのか、その流れを勉強しておきましょう。
不動産投資ローンを扱っている数ある金融機関の中から依頼先を選び、融資の担当スタッフにアポイントメントを取ります。
実際に顔をあわせて具体的に相談を進めていくわけですが、アポ取りの電話をしたときに、不動産投資ローンの申請で必要な書類についても聞いておくとよいでしょう。書類集めの時間を節約できます。
また、物件概要書や売買契約書など基本的に必要な書類以外にも、金融機関によって求められる書類が異なる場合もありますので、不備がないように注意が必要です。
金融機関の融資担当者との面談準備が完了したら、約束した日時に赴き、ローン申請の手続きをおこないます。
書類に不備が見つかると、ローン申請や審査が遅れるため、投資物件の購入や建築予定にも影響を及ぼします。
融資実行と不動産運用計画をスムーズに進めるためにも、早めの行動がポイントです。
ローン審査は書類提出から短くて約2週間、長くても約4週間はかかります。
ローン審査に通った場合、申請した金融機関から融資決定の旨、連絡が来ることになります。
その通知を金融機関へ持参し、融資の手続きをおこないましょう。
融資が実行されると、投資用物件の購入にこぎつけることができます。
不動産投資ローンの審査を通りやすくするには?
住宅ローンよりも厳しいと言われる不動産投資ローンの審査。
できるだけその審査を通りやすくするための4つの対策法を解説します。
また、なるべく安い金利でローンを組むためのコツもありますので、あわせてご紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
不動産投資のプロと入念なローン戦略を立てる
投資にリスクは付き物です。不動産投資に初めて挑戦する場合は、不動産投資会社の中でもとくに信頼度の高い会社を見極めることが最重要事項です。
不動産投資のプロであれば、どんなリスクがどれだけあるのか一番よくわかっています。
メリットばかりでなく予想できるリスクについてもきちんと話してくれて、不動産投資用物件の販売に経験豊富な営業マンは信頼性が高いです。
各不動産投資会社は、それぞれに得意なエリアや部屋の広さがあります。
自分が投資用物件の購入を希望するエリアを得意とする不動産会社を調べて、絞っていくというのもオススメの方法です。
不動産投資のプロを見つけ、入念な収支計画を立てることによって、ローン審査における評価も大きく変わることを肝に銘じておきましょう。
変動金利を選択する
固定金利は景気が上昇した場合でも金利に変化がないため、ローンの返済計画を立てやすいというメリットがあります。
変動金利は景気の動向によって金利が上下するというタイプですので、先の返済計画通りに行かない可能性もあります。
金融機関によっては、固定金利期間が設定されている固定金利特約の付加された変動金利型なども存在します。
マイナス金利政策が続く現在、日本国内でのローンの金利は非常に低い状態を保っており、固定金利よりも変動金利のほうが低くなっています。
この状況の中ではすぐに景気がよくなるという見通しを立てることは難しく、固定金利・変動金利のどちらを選んでも構わないというのが正直なところでしょう。
現在までの日本国内の景気動向と金利の変化を見ると、低金利の引き上げは景気動向を後追いするような形でなされていきます。
まずは変動金利を選択し、なるべく安くローンを借りるのが得策だと言えます。
可能な限り繰り上げ返済をしつつ、景気が上昇しそうな気配があれば、そのときに固定金利やもっと安い変動金利のローンへの借り換えを検討することも可能です。
審査に通りやすい属性を整える
融資をする側の金融機関にとっては、返済能力が高い人へお金を貸したいもの。
不動産投資ローンでは、その判断基準となるのが年収や保有資産、現在の経歴、そして物件の収益性です。
今までクレジットカードのローンなどでも小さな返済滞納がなかったかどうかまで確認されます。
ローン審査を申請する前に自分の資産を洗い出し、さまざまな情報をしっかりと整理しましょう。
投資用物件の選定についても、駅近など収益性の高いところを選ぶことで審査に通りやすくなります。
審査の通りやすい金融機関を選択する
不動産投資ローンの融資利率や審査基準などは、それぞれの金融機関にて独自に決めているものです。
そのため、どの金融機関を選ぶのかによって、同じ人が同じ物件の不動産投資ローンを申請しても、審査に通ることもあれば通らないこともあるのです。
信頼のおける不動産会社に提携金融機関を紹介された場合でも、他の金融機関と審査条件を比較することは大切です。
また、金融機関によっては、店頭表示金利とは異なる金利を設定しているケースもあります。
結局は、自分で金融機関について下調べすることが、自分の資産を守ることにつながります。
まとめ
不動産投資のローンを組もうと考えたら、順番としてはまず、不動産投資会社を決めて相談し、その後に金融機関へ不動産投資ローンを申し込むという流れになります。
事前に自分で勉強し、ある程度の基礎知識を身につけてから、不動産投資会社や金融機関に赴くのが賢明です。
空室が続き収益が上がらないだけでなく、不動産投資ローンの返済までも難しくならないように、入念な資金計画を立てるようにしてください。