不動産投資について勉強していると、「積算価格」という言葉を耳にすると思います。
積算価格は、投資用の物件を売買する際に、その価格がそのエリアやその他条件を加味して適正かどうか、ということを判断する材料となります。
大きな金額が関係する不動産投資では、とても重要な作業だといえるでしょう。
今回は、そんな積算価格について、収益価格との違い、土地・建物それぞれの計算方法を詳しく解説します。
ご自身でエクセルなど計算ソフトを使ってできますので、挑戦してみてください。
目次
不動産投資の基礎知識「積算価格」とは
不動産投資物件の価値を評価するには、土地と建物を別々に評価し、それらを合わせるという作業が必要になります。
この土地と建物それぞれ評価したものを合わせた評価額が、「積算価格」と呼ばれるものです。
積算価格を求める式は以下の通りです。
収益価格との違い
積算価格と似たものに、「収益価格」があります。
収益価格とは、不動産投資物件が家賃収入により今後生み出すと予想される純利益に、現在価値も含めて算出される評価額です。
積算価格が物件の再建築費をベースとしていることに対し、収益価格は将来的な収益面を基本として算出されます。
どちらも物件の評価額という点では同じですが、評価の目的が異なることから、計算に用いる物件の着目点も異なっているのです。
不動産の積算価格が融資額を決定する一つの指標になる
融資元となる金融機関が融資額を決定する際、ローン申請者の保有している、もしくはこれから購入する予定の不動産が、融資額に相当する担保であるかどうかという「担保評価」をします。
積算価格は、物件購入の際に利用できる融資額を決める指標とはなりますが、あくまでもそのうちの一つに過ぎません。
金融機関は収益価格などほかの材料も参考にして、融資額を決定します。
また、積算価格は公的データを用い、基本的には取引されている価格よりも低めに計算されます。
土地評価額の概要と計算方法
不動産投資物件が建っている土地の価格を評価する計算方法にはいくつかありますが、一般的な計算式は、以下のようになります。
計算には、その土地の形の事情を含めた調整が入る場合もあります。では、土地価格の計算方法について詳しく見ていきましょう。
土地評価額の計算方法
土地価格を決めるには、固定資産税路線価のほかに、相続税評価額路線価、公示価格も参考にします。
固定資産税路線価
固定資産税路線価とは、国税庁が毎年決定・発表するもので、その土地1㎡あたりの価格となっています。
土地へ固定資産税を課すための固定資産税評価額を算出する際に用いられます。
公示価格の70%ほどで評価されます。
相続税評価額路線価
国税庁が相続税を課す目的で毎年決定・発表するもので、こちらも同様に土地1㎡あたりの価格です。
評価は公示価格の約80%となります。
公示価格
2名以上の不動産鑑定士により鑑定評価を行い、国土交通省が毎年1回決定・発表するものです。この土地価格は、1月1日時点のものという認識になります。
以上、3つの参考価格が存在しますが、積算価格は低めに計算されるものですので、中でも一番低い固定資産税路線価を参考に計算するのがベストです。
所有している不動産物件の立つ土地の固定資産税路線価は、一般財団法人資産評価システム研究センターの全国地価マップで確認することができます。
土地の形状によって評価額が変わる
土地の形状には、角地・旗竿状など複雑な形の土地や、二面の道路に面している土地などもあり、その特徴によって評価額が変わります。
角地
角地は、一番利用価値が高い土地です。面する2つの道路のうち高いほうに土地面積をかけた評価額が、さらに1割増しされることになります。
旗竿地
旗竿地は、袋地から道路まで、通り道として細長く伸びた敷地がくっついている形状をしている土地です。使いにくいために、評価は3割程度低くなります。
二面の道路に面している土地
東と西、南と北など、二面の道路に面している土地では、高い評価額のほうで計算します。
土地評価額のシミュレーション
固定資産税路線価格を参考にして、実際に以下の土地評価額を評価してみましょう。
・所在地 :東京都中央区佃3丁目22番9(住居表示:佃3丁目11-13)
・土地面積 :200㎡
→ 固定資産税路線価:51万円
→ 土地評価額 :51万円 × 200㎡ = 1億200万円 となります。
建物評価額の概要と計算方法
不動産の積算価格の計算に必要なもう一つの材料が、「建物評価額」です。
建物評価額は、次の計算式で出すことができます。
では、建物評価額の計算方法について詳しくご説明します。
再調達価格の計算方法
上の計算式では、見慣れない単語がいくつか出てきました。
「再調達価格」とは、同じ建物を新しく建てた場合の建築価格のことを指します。
新築時の評価額は建物の構造によって、以下のように決まっています。
建物の構造 | 新築時の評価額単価 |
---|---|
鉄筋コンクリート(RC) | 20万円/㎡ |
重量鉄骨 | 18万円/㎡ |
軽量鉄骨 | 15万円/㎡ |
木造 | 15万円/㎡ |
木造で延床面積が100㎡の建物の場合、再調達価格の単価は15万円ですので、15万円 × 100 = 1,500万円 と算出されます。
残価率の計算方法
「残価率」とは、建物の「耐用年数」に対して「残耐用年数」がどのくらいの割合なのかということになります。
建物の法定耐用年数は、その構造別に以下のように決まっていて、この耐用年数から築年数を差し引くと、残耐用年数を出すことができます。
鉄骨厚3mm以下
建物の構造 | 法定耐用年数 | |
---|---|---|
鉄筋コンクリート(RC) | 47年 | |
重量鉄骨 | 34年 | |
軽量鉄骨 | 鉄骨厚3mm以下 | 19年 |
鉄骨厚3mm~4mm以上 | 27年 | |
木造 | 22年 |
木造で築年数が15年の建物の場合、残価率は次のように算出されます。
22年(耐用年数)-15年(築年数)=7年(残耐用年数)
7年 ÷ 22年 = 31.8%(残価率)
建物価格のシミュレーション
再調達価格と残価率を参考にして、以下の建物価格を評価してみましょう。
・構造 :木造
・延床面積 :100㎡
・築年数 :15年
→ 建物評価額:15万円 × 100㎡ × 31.8% = 477万円 となります。
積算価格計算シミュレーション
では、ご紹介した計算方法をすべて使い、以下の不動産物件を例に挙げて積算価格を出してみましょう。
・住所 :〒105-0011東京都港区芝公園4丁目2-8
・土地面積 :200㎡
・建物 :鉄筋コンクリート造
・延床面積 :100㎡
・築年数 :20年
→ 固定資産税路線価 :121万円
土地評価額 :121万円 × 200㎡ × 110%(角地のため1割増)= 2億6,620万円
建物評価額 :20万円 × 100㎡ ×(27年 ÷ 47年)= 1,140万円
積算価格は、2億6,620万円 + 1,140万円 = 2億7,760万円 となります。
記事まとめ
マンションなど不動産投資用の収益物件を購入する際は、すべてを不動産会社にまかせるのではなく、ご自身でも土地と建物の評価額を合計した積算価格をきちんと出すことが大切です。
金融機関からの融資限度額にも大きく関係してきますし、頭金を準備する際の目安にもなりますので、正しい情報を把握しておくようにしましょう。
積算価格の高さは物件の売買や固定資産税額に関係するものではありますが、物件の収益性とは、また異なるということも意識しておいてください。